一厘いちりん)” の例文
私達はどんなにそのめにもだえたでせう!その頃の風潮ふうてうからは、たゞ破壞はくわいをのみ會得ゑとくして、建設けんせつについては一部いちぶ一厘いちりんだにもまなぶことが出來できなかつたのです。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
誠に、なんじに告ぐ、一厘いちりんも残りなく償わずば、其処そこを出づることあたわじ。(マタイ五の二十五、六。)これあ、おれにも、もういちど地獄が来るのかな? と、ふと思う。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
合点がてんならねば、是是これこれ御亭主、勘違い致さるゝな、お辰様をいとしいとこそ思いたれ女房に為様しようなぞとは一厘いちりんも思わず、忍びかねて難義をたすけたるばかりの事、旅の者に女房授けられてははなはだ迷惑。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)