一世いっせ)” の例文
円朝えんちょうのちに円朝は出なかった。吉原よしわらは大江戸の昔よりも更に一層の繁栄を極め、金瓶大黒きんぺいだいこくの三名妓の噂が一世いっせの語り草となった位である。
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それじゃおかみさんご機嫌よう、二度と忠太郎は参りやしません——愚痴ぐちをいうじゃねえけれど、夫婦は二世にせ、親子は一世いっせと、だれが云い出したか、身に沁みらあ。
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
御意ぎょいのままに何なりと、トシ子さんとあなたの結婚式に一世いっせ一代の余興よきょうでもやりますよ」
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この歌は、平安朝に艶名えんめい一世いっせあっした、かりけるわらべあおをかりて、あをかりしより思ひそめてき、とあこがれたなさけに感じて、奥へと言ひて呼び入れけるとなむ……名媛めいえんの作と思う。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)