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ようりゅうかんのん
飯はようやく
了る。膳を引くとき、小女郎が入口の
襖を
開たら、中庭の
栽込みを
隔てて、向う二階の
欄干に
銀杏返しが
頬杖を突いて、開化した
楊柳観音のように下を見詰めていた。
そうしてその上には怪しげな
楊柳観音の軸が、
煤けた
錦襴の
表装の中に
朦朧と
墨色を弁じていた。
ランプは
相不変私とこの
無気味な客との間に、春寒い焔を動かしていた。私は
楊柳観音を
後にしたまま、相手の指の一本ないのさえ問い
質して見る気力もなく、
黙然と坐っているよりほかはなかった。