-
トップ
>
-
みのゝくに
立去三人道を急ぎ同月下
旬美濃國なる常樂院へ
着し案内を
乞拙者は伊豫國藤が原の者にて赤川大膳と申す者なり
參りし
趣き取次玉はるべしといふ取次の
小侍は早速此事を
ば受取一先
美濃國へ立歸らんと天一坊は大膳
右門遠藤屋彌次六との三人を同道して
常樂院へ歸り來りて右の
首尾を物語れば常樂院もさらば
拙僧も一
目論して見よと
庚申待を
立去り
美濃國各務郡谷汲の
郷長洞村の日蓮宗にて百八十三箇寺の本寺なる常樂院の
當住天忠上人と聞えしは藤井紋太夫が
弟にて大膳が爲には
實の
伯父坊なれば大膳は此長洞村へ尋ね來り
暫く此寺の
食客となり居たりしが元より不敵の者なれば
夜々往還へ出て旅人を