“うちかす”の漢字の書き方と例文
語句割合
打霞100.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
連日風立ち、寒かりしに、この夜はにはかゆるみて、おぼろの月の色もあたたかに、曇るともなく打霞うちかすめる町筋は静に眠れり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
てうは馬車を駆つて市の南門なんもんで、セエル河を渡つて郊外のサンタ・ヹルタン村に遊んだ。柔かに打霞うちかすんだ新緑の木立こだちは到るところにコロオやピサロオの風景画を展開した。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
春の色香いろかでたるはあはれむべく、打霞うちかすめる空に来馴きなるるひよのいとどしく鳴頻なきしきりて、午後二時を過ぎぬる院内の寂々せきせきたるに、たまたま響くは患者の廊下をゆるう行くなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
打霞うちかすみたる空ながら、月の色の匂滴にほひこぼるるやうにして、微白ほのじろき海は縹渺ひようびようとして限を知らず、たとへば無邪気なる夢を敷けるに似たり。寄せては返す波の音もねむげに怠りて、吹来る風は人を酔はしめんとす。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)