元来がんらい)” の例文
旧字:元來
元来がんらいこのバナナが正しい形状を保っていたなら、こんなえる肉はできずに繊維質のかた果皮かひのみと種子とが発達するわけだけれど
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「今日は山端やまばな平八茶屋へいはちぢゃや一日いちんち遊んだ方がよかった。今から登ったって中途半端はんぱになるばかりだ。元来がんらい頂上まで何里あるのかい」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むしろ場合によりてはむべきで、消極的修養しょうきょくてきしゅうよう努力どりょくであると思う。元来がんらい普通の人はすべて幾分かの弱点じゃくてんを備うるものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
元来がんらい英国人とは反りが合わずに、わば日本贔屓びいきの人でありながら、今度来遊、その日本の実際を見て何分にも贔屓が出来ぬ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
元来がんらいわたくしなみだもろいおんないまでもくせがとまりませぬが、しかしあのときほどわたくしがつづけざまにいたこともなかったようにおぼえてります。
元来がんらい、次郎の勇気は学校との距離に反比例し、実家との距離に正比例することになっていたので、戦うならなるべく早い方ががよかったのである。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
近代の人ではアンリー・ルッソーの画を座右ざゆうにしてます。元来がんらい氏は、他に対して非常な寛容かんようを持って居る方です。
元来がんらい日本人はむずかしい理屈をこねることにおぼれすぎている。だから、太平洋戦争のときに、わが国の技術の欠陥をいかんなく曝露ばくろしてしまったのだ。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ところが、元来がんらい正覚坊しょうかくぼうとあだなされてるくらいの平助と、本物の正覚坊とが一緒になったものですから、いくら酒があってもすぐになくなってしまいます。
正覚坊 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
しは元来がんらい金のことにかけては不得手至極なほうで、人一倍に苦心をせにゃ人並みの考えが浮かんで来ん。
親子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
元来がんらいが自然科学に多大の興味を寄せていた人でもあっただけに、その頃の著名な学者に依頼して特別な教育をも施したので、一層にその進歩を速めたのでありました。
ラヴォアジエ (新字新仮名) / 石原純(著)
下々の人情も天下の御政事も早い話が皆同じ訳合わけあいあきらめてしまえばそれで済むこと。あんまり大きな声で滅多めったな事をいいなさるな。口舌こうぜつ元来がんらい禍之基わざわいのもとい。壁にも耳のある世の中だ。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
だからそうおおもいなされるんですけれど、わたしなどは、元来がんらい野育のそだちなのですから、やはりかぜかれたり、おりおりは、あめにもさらされたほうが、しんみりといたしますわ。
みつばちのきた日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
だが、星野ほしの元来がんらい、よわい打者ではなかった。当たれば、そうとうな大ものをかっばすほうだった。だから、かれは、この三回めの打撃だげきで、名誉めいよ回復かいふくしようと、ひそかにはりきっていたのだ。
星野くんの二塁打 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
みなさん、じつになさけないの中になりました。元来がんらいねこはあわびかいの中のかつ節飯ぶしめししるかけめしべてきていればいいはずのものであるのに、われわれをってべるというのは何事なにごとでしょう。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「ミスター・アカバネは先生に失礼を申上げたのでありません。アカベーンの実例じつれいをお目にかけたのです。元来がんらいアカベーンは人に拒絶きょぜつを与える時の表情でありまして、極く親愛の間柄に用います」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いろいろ療養りょうようをつくしたが、いかんともしようがなく、いささかの理由りゆうをもって親里おやざとへ帰した。元来がんらいは帰すべきでないものを帰したのであるから、もと悪人あくにんならぬ老人は長く良心りょうしん苦痛くつうにせめられた。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そこで研究会けんきゅうかいの会長さんは元来がんらいおさむらいでしたから考えました。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
元来がんらい私の教育主義は自然の原則に重きをおいて、数と理とこの二つのものをもとにして、人間万事有形の経営はすべてソレから割出して行きたい。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
元来がんらい日本の原産ではなけれども、これを西洋リンゴのアップルと区別せんがためにリンゴといわれている。すなわち日本リンゴの意である。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「少しは癒るかも知れないが、元来がんらい性分しょうぶんなんですからね。悲観する癖があるんです。悲観病にかかってるんです」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
元来がんらいいかなる職業しょくぎょうにありても、これに当たる人に三段の区別がある。報酬ほうしゅうだけの仕事をせぬすなわち曠職こうしょくの人。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
同棲どうせいする親愛なそして相憐あいあわれむべき人間同志と思ってます。そして元来がんらいき安い人間の本能を征服出来できて同棲を続ける者同志の因縁いんねんの深さを痛感します。
ただ、元来がんらい無精ぶしょうな所から、何も近所にあるものを嫌ってまで、遠くの風呂へ行くにも及ぶまいじゃないかといった点で、別に是非ぜひをつけてはいなかったのである。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
元来がんらい、なんでもきかれれば、っていることは、はきはきとはな性質せいしつひでちゃんですから、いまにも、そのことが、くちからもれやしないかとたっちゃんは、でなかったのでした。
二少年の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あいつは元来がんらい横着おうちゃくだから、川の中へでもいこんでやりましょう
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
占部うらべさんは元来がんらいの問題に戻った。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
このバショウの名は芭蕉ばしょうから来たものだけれど、元来がんらい芭蕉はバナナ類の名だから、右のように日本のバショウの名として用いることは反則である。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
不風流の由来元来がんらい私は生れ付き殺風景でもあるまい、人間の天性に必ず無芸殺風景と約束があるでもなかろうと思うが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ここもおなじような本棚ばかりの四壁しへきと、読書机とがあり、入口はない代りに、天井が馬鹿に高くつまり二階の天井は元来がんらいないので、三階の天井が二階の天井ともなり
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
元来がんらい内気うちきなこのむすめは、人々ひとびとがまわりにたくさんあつまって、みんなが自分じぶんうえけているとおもうとずかしくて、しぜんうたこえ滅入めいるようにひくくはなりましたけれど、そのとき
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
元来がんらい家事にむかない私が自分の研究のひまをさいて、とにかくそれにはげむようになったのも仕向けられるばかりでは済まないこれによって仕向けて上げようと云う意力いりょくから始まったことです。
なぜかと云うと元来がんらいこの私と云う——こうしてフロックコートを着て高襟ハイカラをつけて、ひげやして厳然と存在しているかのごとくに見える、この私の正体がはなはだ怪しいものであります。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
元来がんらい、義務と義務との衝突しょうとつは根底においてあり得べきものでない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
どてらは上機嫌のていで、にこにこ笑いながら、自分の返事を待っている。どうせどてらの笑うんだから、愛嬌あいきょうにもなんにもなっちゃいない。元来がんらい笑うだけ損になるようにでき上がってる顔だ。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
元来がんらい経済難のZ大学なので、助手案は一も二もなく蹴飛けとばされたが、その代り大学部三年の学生で、是非ぜひ赤外線研究をやりたいというひとがいるから、助手がわりにそれを廻そう、当分我慢して
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
決してキリスト教からとおざかろうとはしませんけれど、氏の元来がんらいが、キリスト教より、仏教の道を辿たどるに適して居ないかと思われる程、近頃の氏の仏教修業しゅぎょうが、いかにも氏に相応ふさわしく見受けられます。
元来がんらいおれなどは、なまものだから……なにをてもおもしろいね。とんぼのぶのをても、いぬがけんかをするのをても、子供こどもをまわしてあそぶのをても……。だから、退屈たいくつはしたことがない。
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こんな破屋あばらやでも泊る事が出来るんだったと、始めて意識したよりも、すべての家と云うものが元来がんらい泊るために建ててあるんだなと、ようやく気がついたくらい、泊る事は予期していなかった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それにしても報酬があまりに粗末すぎるようでもあるが、元来がんらい博士は黄金の価値について無頓著むとんちゃくで、ただマージナル・ユーティリテーの大なるものこそしけれ、という極めて淡白なる性格の人だった。
「随分遠いね。元来がんらいどこから登るのだ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)