)” の例文
「貸家ですか。そこはJさんが雇い婆さんに一週間一ポンドずつやって、窓のてをさせていたんですがね。もういけませんよ」
そのかは小六ころくさん、はゞかさま座敷ざしきてて、洋燈ランプけて頂戴ちやうだいいまわたしきよはなせないところだから」と依頼たのんだ。小六ころく簡單かんたん
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
義雄はわざとがたびしと玄關の土間にある下駄箱の蓋を明けて、自分の兩り下駄を出して足に突ツかけ、逃げ出すやうに家を出た。
泡鳴五部作:01 発展 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
一四二烈婦さかしめのみぬしが秋をちかひ給ふを守りて、家を出で給はず。翁も又一四三あしなへぎて百かたしとすれば、深くてこもりて出でず。
あたりを活気づけるようなものは何ひとつ見あたらず——扉がてされるでもなければ、何処からひとり出て来る人影もなく
「はっ……」すすんであとて切ると、上人のまわりをつつんでいる暖かな部屋の空気が、やがて、四郎のこごえている心をもつつんだ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だいぶ前から金具がびていて、てに歯の浮くような音を立てましたが、二三日こっち不思議にそんな音が聞えなくなりました」
またそつとてゝとき頸筋くびすぢかみをこそつぱい一攫ひとつかみにされるやうにかんじた。おつぎはそと壁際かべぎは草刈籠くさかりかご脊負せおつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
如何いかなる罪やあらげなくてらるる扉にたもとはさまれて、もしもしとすくひを呼ぶなど、いまだ都を離れざるにはや旅のあはれを見るべし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「世間の口に戸はてられねえ。粗相そそうで死んだのか、身を投げたのか、自然に人が知っているのさ。高巌寺でもそんなことを云っていたっけ」
半七捕物帳:24 小女郎狐 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
て切つた障子に秋の陽が明るくあたつてゐる午後三時過ぎ、ものうさうな蟋蟀の歌に混つて、ふとこんな声を私は聴きつけた。
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
いつも部屋の中でも帽子を取ることをしない小さな森村が、眉と眉との間をびくびく動かしながら、乾ききった唇を大事そうに開けてした。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
屹度きつともなくおなほりでせう。』と、ニキタはまたふてアンドレイ、エヒミチの脱捨ぬぎすてふく一纏ひとまとめにして、小腋こわきかかへたまゝてゝく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
杉戸すぎどてゝ店へ往って寝てしまいましたが翌日になって見ると、まさか死ぬにも死なれず、矢張やっぱり顔を見合せて居ります。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
渠は成るべく音のしない樣に、入口の硝子戸をけて、てて、下駄を脱いで、上框の障子をも開けて閉てた。此室こゝは長火鉢の置いてある六疊間。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
こうした家の、裏口を、あけてすることなんぞは、お初に取っては、苦でもない。まるで風が隙を潜るようなものだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
殊に秋の末から冬にかけては、よくよく穏やかな日和でないと、北風をおそれて硝子障子さえもぴたりとてきった。
(新字新仮名) / 鷹野つぎ(著)
障子しょうじてにその娘が欄干にもたれて中庭越しにこっちの部屋を伏目で眺めて居る姿が無意識の眼に映るけれども
健康三題 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
彦は何かぶつぶつ口の中で呟きながら表の板戸をてようとしていた時、その彦兵衛の足をすくわん許りに突然いきなり一匹の大きな四つ足が飛び込んで来た。
とにかく、老爺は突然目にも耳にも口にも、或いは心に迄、厚い鎧戸よろいどててしまった。彼は今や古い石の神像クリツツムだ。
南島譚:03 雞 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ズルズルと引っ張り込み、門の戸ピッシャリててしまうと、気絶している織江の躯を、女は奥へ抱いて行った。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼はこうして洋傘をてしながらも、今熊が飛びかかるか、今飛びかかるかと冷々して、静かに近づいて行ったのです。やがて五間も進み寄りました。
(新字新仮名) / 久米正雄(著)
部屋のしきりをて切って刺青の道具を手にした清吉は、暫くは唯恍惚うっとりとしてすわって居るばかりであった。彼は今始めて女の妙相みょうそうをしみ/″\味わう事が出来た。
刺青 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
やがて輕い跫音が階段をのぼり、廊下を行くかすかな跫音あしおと、つゝましやかな樂しげな笑ひ、ドアてなどが聞えてゐたが、しばらくすると、しんとしてしまつた。
これまでこうして戸をてて古本を仕入れに出かけるのは折々のことで、最近は娘さんが帰って居て、こういうことはなかったが、娘さんがまた何処かへ行ったので
好色破邪顕正 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
襖のてや前かゞまりの歩きつきが、斜に照らされるランプの光でいかにも物靜におとなしやかに服從と云ふ事より外には何にも知らない人形のやうに思はれた。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
宮崎運転士のいったように、賄部屋の後側になるしきりには、ての出来るようになったドアが一枚はまっていた。把手とってのない鍵穴のついていることが直ぐわかった。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
清三は夕日のさし込んで来る座敷の一隅かたすみで、あつらえの来る間を、大きな男が大釜のふたを取ったりてたりするのを見ていた。釜の蓋を取ると、湯気が白くぱッとあがった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
深い木立ち際から舞い込んで来た虫が、薄暗いランプの笠に淋しい音を立ててまわりを飛んでいた。お庄は帯を締めると、障子をてきって、暗い廊下の方へ出て行った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ふすまやガラス障子でくぎられてゐるので——もちろん、これらは釘で打ちつけられてあけてできぬやうにはしてあるが、お互ひの生活は半ば丸出しと云つてよいのである。
日本三文オペラ (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
奥の部屋からは、あけさしの戸口をくぐって、煙草の煙が波のように流れてくるので、しきりにせきが出るにもかかわらず、彼女は戸をぴっしゃりてようともしなかった。
さて残りたる米を粥に作りて何のあじはひも無く腹を満たし、梅干、塩、味噌なぞを嘗めながら、日もすがら為す事も無く方丈にて籠もり、前の和尚の使ひ残したる罫紙を綴ぢ
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
門前払い同様にしたといわれ、ずっと前の家では格子戸こうしどてきり、水をぶっかけようとしたこともあるという。それは何かしら心の安定を失っていたときと見た方がよかろう。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
幾度も門をてする音がしたあとで、門の中はひっそりとしてそよとの声もない。
白光 (新字新仮名) / 魯迅(著)
がたがただけれども、南瓜の蔓がてする、その木戸が一つ附いていて、前長屋総体と区切があるから、およそ一百坪に余るのが、おのずから、糸七の背戸のようになっている。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ての引手を撫でたりして見たが、これまで獨で出這入りした事がないのだから、探り/\、外の廊下まで出て見る事も、一つの變化を與へるやうな氣がして、そのまゝ外へ出て
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
ガラガラ……バタンバタン……暫くドアを開けてする音が聞えていたが、やがて悲しげなふるえる声が「……せ、せんせいィ……大変だァ……」と四号室から一号室へ、続く廊下を押切って
三狂人 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
て切った雨戸の外側に筆太く「馬鹿」と書いてあるのをながめて居た。
二十三番地 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
目の前はやっぱりお庭先の植込らしく、木の枝に視線はさえぎられるが、それでも廻縁になった廊下が長くつづいて、てきった障子しょうじにあかあかと夕日の射しているさまが、手に取るようにうかがわれた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
今周蔵のいる家は、全く変っていて前には、格子戸がっていた。
黄色い晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
雨戸はいつも大かたてきりで、この東南の一隅だけが、側の高窓の障子で、わずかに明るい。四尺に二尺ほどの画布カンヷスをのせた画架を、窓へ斜めに。後ろは浅い床の板壁に、ひげ題目の古びた掛け軸。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
誰が覗いていたのか、障子をぴしゃりと外からてた者がある。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
『早やうてゝお出でなはれ!』と継母は命ずる。
主任がてきるような調子でいった。
肌色の月 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
一人ひとりすはつて居ると、何処どことなく肌寒はださむの感じがする。不図気が付いたら、机の前の窓がまだてずにあつた。障子をけると月夜だ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
戸はてられてあるが、窓は風を呼ぶためにあいていた。宵月のほの明りが揺れてくる。——と、眠りかけたかと思われる頃
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正月は大師さまへのお参りは有りませんから客を致しませんので、表はピタリ障子がって居りまする、処へ小僧が参り
渠は成るべく音のしない様に、入口の硝子戸を開けて、てて、下駄を脱いで、上框あがりがまちの障子をも開けて閉てた。此室ここは長火鉢の置いてある六畳間。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
見る間に出行いでゆく貫一、咄嗟あなや紙門ふすまは鉄壁よりも堅くてられたり。宮はその心に張充はりつめし望を失ひてはたと領伏ひれふしぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
てきつた鎧戸よろひどに鳥打帽の頭を当てがつて、こくり/\居睡ゐねむりをしてゐたが、電車が大物だいもつを出た頃に、ひよいと頭を持ち直して、ぱつちり眼をけた。