追掛おっか)” の例文
私は田舎武士ざむらいで様子が知れぬから、面倒と思って、逃ると追掛おっかけたから、是はたまらんと思って当家へ駈込みお店を荒して済みませんが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ワッとおびえて、小児こどもたちの逃散る中を、団栗どんぐりの転がるように杢若は黒くなって、凧の影をどこまでも追掛おっかけた、その時から、行方知れず。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あゝもし/\。もし/\。宮ちゃん宮ちゃん、一寸々々ちょいとちょいと。まだ話すことがあるんだよ。」と何か話すことがありそうに言って追掛おっかける。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
すると綺麗きれいに切りてられべきはずの過去が、かえって自分を追掛おっかけて来た。彼の眼は行手を望んだ。しかし彼の足はあとへ歩きがちであった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「角川の息子を殺してろうと思って行ったんだけれども、見付かったんで無効だめだった。それから大勢に追掛おっかけられて、やッと此処ここまで逃げて来たんだ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「よし、見失みうしなわないように追掛おっかけよう。……この潜水服は勿体ないが、ここに捨てておけ」
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ところが一人の舁夫が追掛おっかけて参りますので、お町は女の繊細かぼそき足にて山へ登るはかないませぬから、転げるように谷へりました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「そうよ、其奴を、だん踏潰ふみつぶして怒ってると、そら、おいら追掛おっかけやがる斑犬ぶちいぬが、ぱくぱくくいやがった、おかしかったい、それが昨日さ。」
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は、慄然ぞっとするような気がして、これはなるたけ障らぬようにして置くが好いと思って、後を黙っていると、先は、反対あべこべに、何処までも、それを追掛おっかけるように
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
先刻さっきも云った通り、巡査が一度追掛おっかけたことも有ったが、到頭とうとうつかまらなかった。何しろ、猿と同じように樹にも登る、山坂を平気でかける、到底とても人間の足では追い付かないよ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かように自分の心が、左右前後とはなれ離れになって、しかも独立ができないものだから、物のあと追掛おっかけ、追ん廻わしているほどつらい事はない。なんでも敵にったら敵をむに限る。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
受人がなければ奉公は出来ず、と云って国へけえれば抜刀ぬきみ追掛おっかけられて殺されてしまいやすから、よんどころなく此処から飛込んで死にやすが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その鼻の飛んだ時、キャッと叫ぶと、顔の真中まんなかへ舌が出て、もげた鼻を追掛おっかけたというのである。鳥博士のは凍傷と聞いたが、結果はおなじい。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「今あの岩の蔭に重太郎の隠れているのを見付けましたから、すぐ追掛おっかけて行ったのですが、彼奴あいつ中々足がはやいので、たちまち見えなくなってしまいました。残念なことをたです。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
突棒つくぼう刺股さすまたもじりなどを持って追掛おっかけて来て、折り重り、亥太郎を俯伏うつぶせに倒して縄を掛け、すぐに見附へ連れて来て調べると、亥太郎の云うには
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
追掛おっかけに、また一遍、片足を膝頭へ巻いて上げ、一本の脛を突支棒つッかえぼうに、黒い尻をはっとゆすると、組違えにトンと廻って
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わしの跡を追掛おっかけて来て富五郎はいるか、かくまったろう、イエ慝まわぬ、居ないといえばじゃア戸棚に居ましょうというので捜しましょう
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お百合、いきを切って、つまもはらはらとげ帰り、小家こやの内に駈入かけいり、隠る。あとより、村長畑上嘉伝次はたがみかでんじ、村の有志権藤ごんどう管八、小学校教員斎田初雄、村のものともに追掛おっかけ出づ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
○「饒舌だって剣術の先生や何かもみんな喋ったじゃアねえか………なんでごぜえやす……えゝ其の八州が追掛おっかけて何したんで、当りを付けたんで」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わっし下口おりくちまで追掛おっかけたが、どうしていか、途方にくれてくるくる廻った。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先刻さっきも申す通り私は決して悪人ではない、賊の為に災難にうて逃げるはずみに此の穴へ落ちた者、其の時お前が追掛おっかけて出たの二人の者こそ泥坊じゃぞえ
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
追掛おっかけるのか、逃廻るのか、どたばた跳飛ぶ内、ドンドンドンドンと天井を下から上へ打抜くと、がらがらと棟木むなぎが外れる、戸障子が鳴響く、地震だ、と突伏つッぷしたが、それなりしんとして、しずかになって
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ほかの者は十郎ヶ峰のむこう雑木山ぞうきやまへ登って、鉄砲を持って待っている所へ、かくとは知らず孝助は、息をもつかず追掛おっかけて来て、石橋まで来て渡りかけると
物をも云わず永禪和尚柄の長い薪割を振上げて追掛おっかけたが、人を殺そうという剣幕、なんともどうも怖いから
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おらア出て押えようと思ったら、突転つきこかして駈ん出すだ、追掛おっかけることも出来なえから、早くわれが帰らばいと心配ぶって居たゞ、早く何うかして追掛けて呉んなよ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其奴そいつひどい奴で、重役の渡邊織江様を斬殺きりころしたんで、其の子が跡を追掛おっかけて行くと、旨く言いくろめて、だまして到頭連出して、何とかいう所だっけ、然う/\
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
に縛られて居た旅人の着物や金を取返してやると云って、盗人ぬすびとの跡を追掛おっかけて行かしった、もう今頃は浅貝あたりへお帰りになりましたろう、旦那の云うにゃア
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
流石さすがの仙太郎も驚き慌てゝ船の中へ飛込み、繋縄もやいを解いて是から無闇に船を漕いだが、あとから追掛おっかけて来るような心持で川中へ漕出すが、上潮はじめで楽ゆえ段々漕上こぎのぼって
どうも江戸はえれえおっかねえ所で、なか/\い所だと云うのは嘘でがんす、側から/\火事が追掛おっかけて来て、彼方此方あっちこっち逃𢌞って、漸くのこんでけえってめえりやしたが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おらア泥坊だと思って泥坊々々とがなると、突然いきなり脇差を引抜いて追掛おっかけて来たから、逃げべいとすると木の根へつまずき、打転ぶっころがると、己の上へ乗し掛り殺すべえという訳だ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
繼「これ又市見忘れはすまい、お繼だ、よくも私のお父様とっさまを薪割で打殺して本堂の縁の下へ隠し、あまつさ継母まゝはゝを連れて立退たちのき、また其の前に私を殺そうとして追掛おっかけたな」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うして久留島さんまで送り届けて、すぐに四万へ追掛おっかけて往って掛合をしたが、其の時此の野郎を踏捕ふんづかめえれば宜かったアだが……うぬ此処へ来やアがって何んだえ化けやアがって
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
みんなが徒党をして、大勢でわっち打殺うちころすと云って追掛おっかけたものだから、一生懸命に此処こゝまでは逃げて来たが、目が眩んでいますから、殿様とも心付きませんで、とんだ粗相を致しました
後影うしろかげを起上りながら、長二が恨めしそうに見送って居りましたが、思わず跣足はだしで表へ駈出し、十間ばかり追掛おっかけて立止り、向うを見詰めて、何か考えながら後歩あとじさりして元のあがはなに戻り
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
這々ほう/\ていで逃げてくと、弥次馬に追掛おっかけられて又打たれる、意気地いくじのない事。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二人はびっくりして道哲どうてつの方へ無闇に逃出しましたが、跡から侍が追掛おっかけてまいるので、おのが足音か跡から追掛けて来る侍の足音か分りませんが、何だか傍へ来たような心持がいたしますから
わっちが今立聞をしていたら、孝助の母親おふくろ咽喉のどを突いて、おなれさん方の逃げた道を孝助におせえたから、こゝへ追掛おっかけて来るにちげえねえから、おめえさんは此の石橋の下へ抜身ぬきみ姿なりで隠れていて
うらのような百姓にそべへ参ってゆっくりてえ挨拶して行くたアえらいねえと噂アして、おめえさま帰って仕舞ったあとで見ると置いたつゝみえから後を追掛おっかけておまえさまア尋ねたが、混雑中こむなかだから知れましねえ
縁切だとって書附を放りつけて出て来たら、小兼め、あとから追掛おっかけて来やアがって仕方がねえ、よんどころなく大津の銚子屋へ遁込にげこんで見ると、まだ二三人も客が居るに彼奴あいつがぎゃア/\狂人きちげえのようになって
追掛おっかけようといっても彼奴江戸へ出られる奴でないから大丈夫
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と云いながら追掛おっかけてくと、野次馬が大勢居りますから