落着おちつき)” の例文
もしみぎのような性質せいしつ心得こゝろえてゐると、こゝろ落着おちつき出來できるため、危急ききゆう場合ばあひ機宜きゞてきする處置しよち出來できるようにもなるものである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
結句は、「真熊野の船」という名詞止めで、「棚無し小船」などの止めと同じだが、「の」が入っているので、それだけの落着おちつきがある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
出立して此程は此堤このどてにて危ふかりしなどと道すがらかたあひつゝ江戸表馬喰町へ來り武藏屋むさしや長兵衞方に落着おちつき寶珠花屋よりの添書を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かつお勢は開豁はでな気質、文三は朴茂じみな気質。開豁が朴茂に感染れたから、何処どこ仮衣かりぎをしたように、恰当そぐわぬ所が有ッて、落着おちつきが悪かッたろう。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
藍微塵あいみじん素袷すあわせ算盤玉そろばんだまの三じゃくは、るから堅気かたぎ着付きつけではなく、ことった頬冠ほおかむりの手拭てぬぐいを、鷲掴わしづかみにしたかたちには、にくいまでの落着おちつきがあった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
日に焼けたるパナマ帽子、背広の服、落着おちつきのある人体じんていなり。風呂敷包をはすしょい、脚絆草鞋穿きゃはんわらじばきステッキづくりの洋傘こうもりをついて、鐘楼の下に出づ。打仰ぎ鐘を眺め
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と怨みつ泣きつ口説き立て、思わず母の膝の上に手をついてゆすぶりました。母は中々落着おちつきものですから
読書界も、急に落着おちつきを失い、或いは方向転換をしたり、或いは廃刊や出版どめがあったりして、それ等のことはどっちかいうと意味なく騒ぎをきおこし、そして拡大した。
是が學者工夫くふう上のかん要なる處。生死の間落着おちつき出來ずしては、天性と云ふこと相分らず。
遺教 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
それに妙にお前がやっておいでの朝はせかせかした落着おちつきがない気もちになってすぐお前が来るということが分るわ。よく鳥のかげが家のどこかにさすと誰か珍らしい人が来ると言うわね。
童話 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
あの生活に妙な落着おちつき訣別けつべつしがたい愛情を感じだしていた人間も少くなかった筈で、雨にはぬれ、爆撃にはビクビクしながら、その毎日を結構たのしみはじめていたオプチミストが少くなかった。
続堕落論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
することが出来る位、心には、余裕と落着おちつきがある。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
地震ぢしん出會であつた一瞬間いつしゆんかんこゝろ落着おちつきうしなつて狼狽ろうばいもすれば、いたづらにまど一方いつぽうのみにはしるものもある。平日へいじつ心得こゝろえりないひとにこれがおほい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
たくはへたりとは若いにはめづらしき人なりと感ぜしかば吾助に向ひ遠路ゑんろのところ態々わざ/\御尋ね有て御身の落着おちつき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私は、久慈たちが、落着おちつきを取戻して、仔細しさいを物語ってくれるのを待つことにした。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
誠にどうもお仕立したてまうし、お落着おちつきのある流石さすが松花堂しようくわだうはまた別でございます、あゝ結構けつこう御品おしなで、斯様かやうなお道具だうぐ拝見はいけんいたすのは私共わたくしども修業しゆげふ相成あひなりますとつて、卑下ひげするんだ。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
やさしいなかにつよみのある、気軽きがるえても何処どこにか落着おちつきのある、馴々なれ/\しくてをかやすからぬひんい、如何いかなることにもいざとなればおどろくにらぬといふこたへのあるといつたやうなふう婦人をんな
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
伸々した調しらべによって落着おちつきを得ているのは注意すべきである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
お年寄がようよう落着おちつきなされたものを
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云えば、源次郎落着おちつきながら