ごみ)” の例文
そろそろ山の宿の方に近づきますと、綺麗に見える隅田川すみだがわにも流れ寄るごみなどが多く、それでもえさでもあさるのか、かもめが下りて来ます。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
縁先で女の声がきこえたかと思うと、女中らしい若い女がほうきごみ取りを持って庭へ出て来て、魚の骨らしいものをかき集めているらしかった。
半七捕物帳:32 海坊主 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しろ切干きりぼしさずにしたのであつた。切干きりぼしあめらねばほこりだらけにらうがごみまじらうがひるよるむしろはなしである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
下婢が台所の戸を開ける頃は、早起の隣家の叔母おばさんは裏庭を奇麗に掃いて、黄色い落葉の交ったごみ竹藪たけやぶの方へ捨てに行くところであった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
物置にしてある小屋の開戸ひらきどが半分いている為めに、身を横にして通らねばならない処さえある。勾配こうばいのない溝に、ごみが落ちて水がよどんでいる。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
お婆さんの本名は林つると云ふのであつたが、八十二歳の老人で、柔和なそれは愛らしい顔をした『ごみ拾ひ』であつた。
藍色あいいろに黒ずんだ二十間ほどの幅の潮の流れが瀬波のような音をたて、流木やごみが船といっしょに流れている。
藤九郎の島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
と、兩袖りやうそでげて、はた/\とはらつて、さつほこりいてると、ごみせて、クシヤと圖拔づぬけなくしやみをした。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからごみ掃除に来る人夫も会社の使用人だそうで、帝国衛生株式会社という車を引いている。う然う四谷の芳夫さんもこの春慶応を卒業して三越へ入った。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
けれども少年はしばらくすると機嫌きげんを取直す。というよりもごみを永くめてはおけない流水のように、新鮮しんせんで晴やかな顔がすぐ後から生れ出て晴やかな顔つきになる。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
神札ふだだの、お水だの、仏壇だの、なんだの、すべては彼の眼にいまわしく見える物を、一抱えも持って行って、溝川みぞがわごみのように打ちすててしまった時に、平次郎は
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近隣となりの水を当座は貰つて使つたが、何れも似寄つた赤土水である。墓向ふの家の水を貰ひに往つた女中が、井をのぞいたらごみだらけ虫だらけでございます、と顔をしかめて帰つて来た。
水汲み (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
近隣の水を当座とうざもらって使ったが、何れも似寄によった赤土水である。墓向うの家の水を貰いに往った女中が、井をのぞいたらごみだらけ虫だらけでございます、と顔をしかめて帰って来た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
東武電車の鉄橋の上を絶えず往復する電車の燈影ほかげに照され、貸ボートを漕ぐ若い男女の姿のみならず、流れて行くごみの中に西瓜すいかの皮や古下駄の浮いているのまでがよく見分けられる。
吾妻橋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あばら屋中の荒ら屋だ、やがて塔へ上る階段の許まで行くと、四辺が薄暗くて黴臭くごみ臭く、如何にも幽霊の出そうな所だから、余は此の屋敷に就いての一番新しい幽霊話を思い出した
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
母親は蒲団の前に坐り込んでごみひねりながら、深く思い入っているようであった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
魚のあたりかごみの中りかわからぬ中り、——大魚たいぎょおおゴミのような中りがあり、大ゴミに大魚のような中りがあるもので、そういう中りが見えますと同時に、二段引どころではない、糸はピンと張り
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「まるで人間をごみだと思ってやがる。」
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
母はこの雰囲気の中に坐りながら、しょっちゅう、何かしら道具を膝の上に置いて、楊子で間に挟まったごみを除ったりつや布巾をかけながら人が来るとお説教をします。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ただ客を待つ腰掛茶屋こしかけぢゃや毛氈もうせんが木の間にちらつきます。中洲なかすといって、あしだかよしだかの茂った傍を通ります。そろそろ向岸むこうぎし近くなりますと、ごみが沢山流れて来ます。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
ながれてごみなか西瓜すゐくわかは古下駄ふるげたいてゐるのまでがよく見分みわけられる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
つかえていたごみせきを切ったように、われがちに、河番所のさくへ船が殺到した。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其處そこらのごみ眞黒まつくろに、とつぷりとれると、先刻さつき少女こをんなが、ねずみのやうに、またて、「そつと/\、」と、なんにもはさずそでくので、蒋生しやうせいあしかず、土間どま大竈おほへツつひまへとほつて
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大正九年庚申こうしんの五月末、築地つきじから引越して来た時であった。台所の窓の下に、いかなる木、いかなる草の芽ばえともわからぬものが二、三本、ごみ掃寄はきよせた湿った土の中から生えているのを見た。
枇杷の花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ごみの重さに芥船の動きかねたる悩みこそ
偏奇館吟草 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
蒸されて放つごみ
偏奇館吟草 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)