ほぼ)” の例文
兄姉達は皆彼を愛し尊がって居るのですから今度の病気がどんなに多くの頭を混乱させたかと云う事はほぼ誰にだって想像はつきます。
二月七日 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
東京ことば、大阪、京都、伊勢、中國邊の方言の雜ぜ合せにドス、オマス、ナアなどといふ語尾を附けるとほぼ神戸の言葉に近くなる。
京阪聞見録 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
此ものよしが直ちに、意義分化以前のほかひゞとの続きだとは、速断しかねるが、大体時代は、ほぼ接して居るものと言へる様である。
国文学の発生(第二稿) (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
七月九日に至りてはほぼ一死を期す、その後九月五日、十月五日吟味の寛容なるに欺かれまた必生を期す、またすこぶる慶幸けいこうの心あり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「大雅は余程呑気な人で、世情に疎かつた事は、其室玉瀾ぎよくらんを迎へた時に夫婦の交りを知らなかつたと云ふのでほぼ其人物が察せられる。」
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これまで私が君に話したことで、君は浅間山脈と蓼科たでしな山脈との間に展開する大きな深い谷の光景ありさまほぼ想像することが出来たろうと思う。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
意識活動は或範囲内では統一に由って成立することはほぼ説明したと思うが、なお或範囲以外ではかかる統一のあることを信ぜぬ人が多い。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
また事実湿地でもあるから何処どこかに引移りたいと思い、飯倉いいくらの方に相当の売家うりや捜出さがしだしてほぼ相談をめようとするときに、塾の人の申すに
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
阿闍梨『様子のほどは、ほぼ門内よりうかがい知った。源右衛門とやら、山科坊より親鸞影像を引取りに参りし由。大儀であるぞ』
取返し物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ただ、西のかたはるかに、山城国やましろのくに浄瑠璃寺じょうるりでら吉祥天きっしょうてんのお写真に似させ給う。白理はくり優婉ゆうえん明麗めいれいなる、お十八、九ばかりの、ほぼひとだけの坐像である。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
東京に一泊して悄然として亨一は、伊豆の侘住居わびずまひに歸つた。すず子の顏を見ることさへ苦しいのであつた。すず子はほぼ事の結果を推想して居た。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
白砂山から西の方赤石山に至る上信国境の山々はほぼ高さの平均した長い山脈を縦観する為に、到底一つ一つの山を区別することは不可能であった。
秋の鬼怒沼 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
貫一もそれをこそ懸念けねんせしが、果して鰐淵わにぶちは彼と満枝との間を疑ひ初めき。彼は又鰐淵の疑へるに由りて、その人と満枝との間をもほぼすいし得たるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
巻物形式まではほぼ同様であったが、綴本形式になってからはまるで変った形式となった。即ち袋綴じであって、截口が綴る方にある、西洋の逆態である。
書籍の風俗 (新字新仮名) / 恩地孝四郎(著)
粗雑な言ひ方ながら、以上で私の言はむとするところはほぼ解る事と思ふ。——いや、も一つ言ひ残した事がある。
弓町より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼女の家は、彼の夢とは多少の相違があったにしても——そこは屑物屋ではなかったが——ほぼ相似た様子だった。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
訳者も巻末に「この小説は今自分に取つて殆んど理想的な小説である。自分はこの訳本を重訳ではあるがその理想的さ加減をほぼ遺憾なく伝へてゐると公言する」
寄贈書籍 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
少くとも吾れと同じ世紀の間に生きていた因縁のある歴史的或は世間的に知名の方々に対してはほぼ右のようなものであり、尚多少の遺漏があるかも知れないが
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「いいや、母上は、男優りであるし、御存じであろう——ほぼ、重だった人の名さえ聞いておけばよい」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
而も車夫は我々とほぼ同時に出立したのである。多くの人々の頭はむき出しで、中には藍色の布をまきつけた人もいたが、同時にいろいろな種類の麦藁帽子も見受けられた。
吉井という男に引っかけられて、いい加減にされているらしい事がほぼ推測出来る。前のと同様にハートなぞいう言葉をこんな風に使うところは、どう見ても江戸ッ子でない。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
きぬた右三郎の子息砧右之助と鞍掛宇八郎は、目的は同じ乍ら、全く別々に行動しましたが、機會が熟したものか、二人共ほぼ一緒に鳴川留之丞の隱れ家——水茶屋の朝野屋を突き止め
昼間太陽熱によつて温めた水を管に通して夜間の暖房に利用することをほぼ完成した。
盗まれた手紙の話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
日本海軍の起源きげんは、安政初年のころより長崎にて阿蘭人オランダじんつたうるところにして、伝習でんしゅうおよそ六七年、学生の伎倆ぎりょうほぼじゅくしたるにき、幕議ばくぎ遠洋えんようの渡航をこころみんとて軍艦ぐんかん咸臨丸かんりんまる艤装ぎそう
秘密を保つ為に一服盛ったなとはほぼ推察は出来るのであったが、それもしかし金三郎と娘お綾との結婚の為には、邪魔が払えた勘定でもあるので、これは絶対に秘密にという小人の奸智かんち
備前天一坊 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
この三人とも梅子さん乃公おれの者と自分で決定きめていたらしいことはほぼ世間でもぎつけていた事実で、これにはたれも異議がなく、ただし三人のうち何人だれが遂に梅子さんを連れて東京に帰りるかと
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
この流をしばらく下ると Bregeブレーゲ 川がこれに合する。ドナウはそこから始まるというのであった。早口で云われたのだが、前に地図で調べて置いたので、若者のいうことがほぼかった。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それでほぼ前世紀犀バルチテリウムが十万年もあとの、洪積層から出た理由も分ります。要するにそこは、人獣ともに害さぬ仏典どおりの世界でしょう。それこそ、つらい現実からのがれる倔強くっきょうな場所です。
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「はい、今また、きれぎれの信号がはいりました。しかし今度は遭難地点をついに聞きとることができました。“本船ノ位置ハ、ほぼ北緯ほくい百六十五度、東経とうけい三十二度ノ附近卜思ワレル”とありました」
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
令嬢の資格がほぼ定まった時、父は代助に向って
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
○鯛は蛋白質弐割ありて滋養分ほぼ比良目に同じ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
大雅たいがは余程呑気のんきな人で、世情に疎かった事は、其室玉瀾ぎょくらんを迎えた時に夫婦の交りを知らなかったと云うのでほぼ其人物が察せられる。」
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
日独協定が行われてほぼ一ヵ年を経た本年下四期に日伊協定が結ばれ、南京陥落の大提灯行列は、大本営治下の各地をねり歩いた。
今日の文学の展望 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
と言って、嘉助は禿頭はげあたまでた。正太が結婚について、いかにさかんな式を挙げたかということは、この番頭の話でほぼ想像された。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
白髪シラガは、けがかに屈折したと言ふ事がほぼ考へられる。併し、毛のかは上にあつて修飾する場合は訣るが、下にある場合に何故かになるのか。
いつどき、宙にられて、少年が木曾山中さんちゅうで鷲の爪を離れたのは同じ日のゆうべ。七つ時、あいだ五時いつとき十時間である。里数はほぼ四百里であると言ふ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
数年すねん勉強の結果をむなしうして生涯二度の艱難辛苦かんなんしんくと思いしは大間違おおまちがいの話で、実際を見れば蘭と云い英と云うも等しく横文にして、その文法もほぼあい同じければ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
自分は『甲斐国志』に拠りて、奥仙丈山の位置境域を右の如く断定して、ほぼ誤りはあるまいと信じている。
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
時にはそれを亨一にもかくすことすらあつた。重大な豫報が何であるか、亨一にはほぼ推測がついた。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
「一念往生の義は京中にもほぼはやっているが、言語道断のことで、まことに問答にも及ばないものだ」といいながらよく事理を細かに尽し、「およそかくのごとき人は、附仏法ふぶっぽう外道げどうなり。 ...
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
性格及び境遇等に影響されて常住不断に飽くあたわず……又は飽く方法を知らず……又は飽く事を知らざる(これと正反対なる性慾耄衰ぼうすいの場合にもほぼ同一の結果に達すれどもここには省略す)
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
起信論の真如や龍樹の空観もほぼ体得なし得たと信じてゐる。
盗まれた手紙の話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
そこでどてらはほぼ話がまとまったものとみ込んで
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
第一は、昨年十一月七日、時刻はほぼ午後九時と九時三十分との間でございます。当日私は妻と二人で、有楽座の慈善演芸会へ参りました。
二つの手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ここに集められている宮本顕治の諸評論は、凡そ一九二九年頃から一九三二年三月頃まで、ほぼ三年間に書かれたものである。
此時代は実は、我々の国の内外ウチトの生活が、粗野から優雅に踏み込みかけ、さうしてほぼ、其輪廓だけは完成した時代であつた。
万葉びとの生活 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
夜気は——夜気はほぼ似て居るが、いま雨は降らない、けれども灯の角度が殆ど同じだから、当座仕込の南方学みなかたがくに教えられた処によれば、この場合
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
新浴場の位置はほぼ崖下の平地ときまった。荒れるに任せた谷陰には椚林くぬぎばやしなどのい茂ったところもある。桜井先生は大尉を誘って、あちこちと見て廻った。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すず子はほぼ事の結果を推測して居た。亨一の帰りを出迎へたとき、その推想があたつて居ることをさとつた。そして亨一の心中を想ひやつて気の毒に思ふ心のみが先に立つて居た。
計画 (新字旧仮名) / 平出修(著)
多摩川上流の吉野谷等は、皆夫々それぞれ特長を持っているものではあるが、秩父渓谷美の一斑はほぼ紹介し得たと信ずるから、其他は次の機会を待つことにする。(大正一五、六『太陽』)
秩父の渓谷美 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)