御坊ごばう)” の例文
ロミオ 御坊ごばうか、消息たよりなんとぢゃ? 殿との宣告いひわたしなんとあったぞ? まだらぬ何樣どのやう不幸ふしあはせが、わし知合しりあひにならうといふのぢゃ?
と起つ。)御坊ごばう、なぞこの世の中にはまことなき奴儕やつばらがはびこつて、正しきものがしひたげられるのでござらうな。
佐々木高綱 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「あれは何事言ふぞ」と云へば、声引きつくろひて、「ほとけの御弟子に候へば、仏の撤上物給おろしたべと申すを、此御坊ごばうたちの惜み給ふ」と云ふ。花やかにみやびかなり。
濫僧考補遺 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
わかいものをそゝのかして、徒労力むだぼねらせると何故あぜふのぢや。御坊ごばう飛騨山ひだやま菊松きくまつが、烏帽子えばうしかぶつて、向顱巻むかふはちまき手伝てつだつて、見事みごと仕上しあげさせたらなんとする。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
七兵衛も此法師とおなじとしごろにて、しかも念仏の信者しんじやなれば打うなづき、御坊ごばうのたのみとあればいかで固辞いなみ申さん、火ともすころにべし、何方いづくにもあれかくれゐて見とゞけ申さん。
その後は何処いづくへ行き居つたか、——おお、この枯木の梢の上に、たつた一人登つてゐるのは、まぎれもない法師ぢや。御坊ごばう。御坊。……返事をせぬのも不思議はない。何時いつか息が絶えてゐるわ。
往生絵巻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其れから御坊ごばうは昔願泉寺と云ふ真言宗しんごんしう御寺おてらの廃地であつたのを、此の岡崎は祖師親鸞上人しんらんしやうにんが越後へ流罪るざいきまつた時、少時しばらく此地こヽ草庵さうあんを構へ、此の岡崎から発足はつそくせられた旧蹟だと云ふ縁故ゆかりから
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
おゝ、御坊ごばう、をしへてくだされ、この肉體にくたいのあたりに、わし醜穢けがらはしい宿やどってゐるぞ? さ、をしへてくだされ、そのにく居所ゐどころ切裂霧さいてくれう。
親仁おやぢ其時そのとき物語ものがたつて、御坊ごばうは、孤家ひとつや周囲ぐるりで、さるたらう、ひきたらう、蝙蝠かうもりたであらう、うさぎへびみんな嬢様ぢやうさま谷川たにがはみづびせられて、畜生ちくしやうにされたるやから
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あつまりしものども、それこそよき善行ぜんぎやうなれ、こよひもよほし玉へ、茶の子はこなたよりもちゆかん、御坊ごばうは茶の用意よういをし玉へ、数珠ずゝあんにはなかりき、これもおてらのをかりてもちゆかん
其頃御坊ごばうさんの竹薮たけやぶたけのこを取りにはいつた在所ざいしよの者が白いくちなはを見附けた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
老いたる法師 御坊ごばう。御坊。
往生絵巻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
……ね、相談敵手さうだんあひてにした其方そちぢゃが、其方そちわしとはいまからはこゝろ別々べつ/\。……御坊ごばうところすくひをはう。ことみなやぶれても、ぬるちから此身このみる。
嬢様ぢやうさまかへるにいへなくたゞ一人ひとりとなつて小児こどもと一しよやまとゞまつたのは御坊ごばうらるゝとほりまた白痴ばかにつきそつて行届ゆきとゞいた世話せわらるゝとほり洪水こうずゐときから十三ねん
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御坊ごばうこそくせをいだしてふねこぎ玉ふらめ、おとたかししづかにいへ、幽霊を見るともかまへて音をたて玉ふな、といひつゝ手作てさくとて人にもらひたる烟草たばこのあらくきざみたるもやゝすひあきて
……ところでものは相談さうだんぢやが、なんとかして、奥様おくさまたすけると工夫くふうはねえだか、のう、御坊ごばう人助ひとだすけは此方こなたつとめぢや、ひと折入をりいつてたのむだで、勘考かんかうしてくらつせえ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わかつた、わかつたよ、御坊ごばう。お前様めえさまが、ほとけでもおにでも、魔物まものでも、たゞ人間にんげん坊様ばうさまでもえ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)