好加減いゝかげん)” の例文
「里見さん。あなたが単衣ひとへものて呉れないものだから、着物きものにくくつてこまる。丸で好加減いゝかげんにやるんだから、少し大胆ぎますね」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
よもやそれ程の金入とも存じませんから好加減いゝかげん胡麻化ごまかし掛けたを問詰められ、流石さすがの悪人も顔色がんしょくが変って返答に差詰りました。
『まあ、土屋君、好加減いゝかげんにしたら好からう。使に来たものだつて困るぢや無いか。』と丑松はなだめるやうに言つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
当時は仔細あつて私の心は彼に在つてこゝに無しといふ有様で、好加減いゝかげんに聞流して置いたが、其後北京へ行つて暫らく逗留してゐると、或日巴里パリから手紙が来た
エスペラントの話 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
けれども其真面目まじめは、単に動機どうき真面目まじめで、くちにした言葉は矢張好加減いゝかげん出任でまかせに過ぎなかつた。厳酷に云へば、嘘許うそばかりと云つてもかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なにか己があの女でも一緒に連れて何処どこかへ逃げでもすると思うだろうが、段々様子を聞けば、あの女は何か筋の悪い女だそうだから、もう好加減いゝかげんに切りあげる積り
悪戯いたづら好加減いゝかげんすかな」と云ひながら立ちがつて、縁側へ据付すゑつけの、の安楽椅子いすに腰を掛けた。夫れりぽかんと何か考へ込んでゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
旦那がお前さんにべさせていと云って拵えたのだ、食わなければ食わないで宜しいじゃアねえか、わっちが食いやす、うやって旦那が詫るのだから好加減いゝかげんに勘忍しておくんねえ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
又かう、怠惰なまけものでは、さう判然はつきりしたこたへが出来ないのである。代助の方でも、門野かどのを教育しにうまれてた訳でもないから、好加減いゝかげんにしてほうつて置く。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それがふくれると自然しぜん達磨だるま恰好かつかうになつて、好加減いゝかげんところ眼口めくちまですみいてあるのに宗助そうすけ感心かんしんした。其上そのうへ一度いちどいきれると、何時いつまでふくれてゐる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「何だ、何を見てゐるんだ」と云ひながら廊下へた。三人はくびあつめて画帖を一枚毎につてつた。色々な批評が出る。みんな好加減いゝかげんである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「君が、あんまり余計な話ばかりしてゐるものだから、時間がかゝつて仕方がない。好加減いゝかげんにして出てるものだ」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それを好加減いゝかげん揣摩しまするくせがつくと、それがすわときさまたげになつて、自分じぶん以上いじやう境界きやうがい豫期よきしてたり、さとりけてたり、充分じゆうぶん突込つつこんでくべきところ頓挫とんざ出來できます。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかしそれは自分じぶんむかちゝからいたおぼえのある、朧氣おぼろげ記憶きおく好加減いゝかげんかへすにぎなかつた。實際じつさい價値かちや、また抱一はういつついてのくはしい歴史れきしなどにいたると宗助そうすけにも其實そのじつはなは覺束おぼつかなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)