いま)” の例文
われを君があだおぼし給ふなかれ、われは君のいづこにいますかをわきまへず、また見ず、また知らず、たゞこの涙にるゝおもてを君の方に向けたり。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
また立ちて祈る時、人を怨むることあらばゆるせ、これは天にいます汝らの父の、汝らの過失を免し給わんためなり。(一一の二二—二五)
しかもさういふ只中にいまして、国民同胞すべての苦難と悲願を尊き御一身に担はせ給ひ、事あるごとに神祇仏法を崇められ
帰依と復活 (新字旧仮名) / 亀井勝一郎(著)
彼等は到る所の霊場で納経をいたゞき、その本尊を負笈おひずるに入れて、之れを背負うて行く、これ仏、我と倶にいます表示である。
にはかへんろ記 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
きょうす。顔渕後れたり。子曰く、吾女なんじを以て死せりと為せりと。曰く、子います。回や何ぞ敢て死せんと。——先進篇——
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
(十一) 子曰く、父いますときは其の志を観、父没するときは其の行ないを観、三年父の道を改むるなき、孝というべし。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
父母いましても、いまさなくても、幼き身で無断に遠く遊んで悪いことは、昨今の自分の身がかえって殷鑑いんかんだと思いました。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのほかお母さんの方の親類は大抵会社に関係している。平社員ばかりでなく、重役もある。会社員は神さまと同じことで、いまさざるところない。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
求めよ、さらばこれらのものはその上に加えられむ、けだしは、天にいます父は、これらのもののなんじらに無くてかのうまじきことを知り給えばなり
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「母上の世にいまさば何とこれを裁きたまわむ、まずそれを思い見よ、必ずかかる乞食の妻となれとはいいたまわじ。」と謂われて返さむことばも無けれど
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
殿堂金碧の美なしとはいへ、おのづから粛穆しゆくぼくの趣あり。俯して谷川をのぞむ、皇后そのかみの卯月、河の中の磯にいまして年魚あゆを釣りたまひけるところ。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
寂心上人は衆生を利益せんがために、浄土より帰りて、更に娑婆しゃばいますということであった。かかることが歴然と寂心上人伝に記されているのである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
塵添壒嚢抄じんてんあいのうしょう』四、猿を馬の守りとて馬屋に掛くるは如何、猿を山父、馬を山子といえば、父子の義を以て守りとするか、ただし馬櫪神ばれきしんとて厩神いま
「ナニ京都みやこ? おおさようか。京都は帝京ていきょう、天子います処、この信濃からは遠く離れておる。しかしよもやただ一人で京都から参ったのではあるまいな」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
よしや、いますが如く思おうと努力していても、それは空虚な努力である。いやいや。空虚な努力と云うものはありようがない。そんな事は不可能である。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
さるを我が父君は御運拙なくいまして、そが異腹の兄上、我が為には伯父君なる人の為に、祖先より伝はりし家督をも家名をも、併せて横領せられたまひて
葛のうら葉 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
持明院統には、後伏見、花園の二上皇があり、大覚寺統にも、後宇多、後二条の両院がいますといったふうに。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この日残暑の夕陽せきよう烈しきに山谷の遠路えんろをいとはずしてわが母上も席につらなり給ひぬ。母は既に父いませし頃よりわが身の八重といふれそめける事を知り玉ひき。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
つむぎあはせ、前のめりになつて、佛壇は開いたまゝ、——その佛壇は駒込町の往來に背を向けて、六疊一パイにはめ込みになつた豪勢なもの、拜んだ姿勢しせいが、佛のいま
限らるゝにあらず、高き處なる最初はじめ御業みわざをいと潔く愛したまふがゆゑに天にいます我等の父よ 一—三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「何よりも善き事は神我らとともにいますことなり」と、神は万物の霊たる人間の有するもののうちに最も善なる最も貴きものなり、神は財産にまさり、人体の健康に勝り
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
われおもふに、君は男の身をあやまり射給ひしのみにあらず、女の心をも亦錯り射給ひしなり。雌雄めをは今ならび飛ぶべし。君は唯だこゝにいませ。自由なる快活なる生計たつきなり。
二人ふたりものおいこゝろはせ何事なにごとにももとめばてんいま我父わがちゝ彼等かれらのためにこれをたまふべし。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
主上のいますところは雲上と言い、公卿たちは雲上人ととなえて、龍顔は拝しがたいもの、玉体は寸地も踏みたまわないものと、あまりに高く言いなされて来たところから
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
孔子いわずや、四海しかい兄弟けいていなりと、人誰か兄弟なきを憂いん。基督クリストいわずや、わが天にいます父のむねを行う者はこれわが兄弟わが姉妹わが母なりと、人誰か父母なきを憂いん。
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「漢陽は、遠いなあ。」いずれが誘うともなく二人ならんでびょうの廊下から出て月下の湖畔を逍遥しょうようしながら、「父母いませば遠く遊ばず、遊ぶに必ず方有り、というからねえ。」
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)
夜明けて朝日のさし出でぬれば、酒の醒めたるごとくにして、禅師がもとの所にいますを見て、只あきれたるさまに、ものさへいはで、柱にもたれ長嘘ためいきをつぎてもだしゐたりける。
「たとひわれ死のかげの谷を歩むとも禍害わざはひをおそれじ、なんぢ我とともにいませばなり……」
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
哀しきかも我が父、痛ましきかも我が母、一身死に向ふ途をうれへず、唯二親世にいます苦を悲しぶ。今日長く別れなば、何れの世にかることを得む。すなはち歌六首を作りてみまかりぬ。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
いませる母をおもうというような歌を作るのを仕事にして三月十日頃まで過ごしました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
わがもとめはむなしからず、予はわが深き至情の宮居にわが神いましぬと感じて幾たびか其の光明に心をどりけむ。吾が見たる神は、最早きの因襲的偶像、又は抽象的理想にはあらざりし也。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
七〇 同じ人の話に、オクナイサマはオシラサマのある家には必ず伴ないています神なり。されどオシラサマはなくてオクナイサマのみある家もあり。また家によりて神の像も同じからず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
つまりは、沖から・辺からと言ふ対句が、一語と考へられて、神のいます遥かな楽土と言ふ事になつたのであるまいか。さうして其儀来河内ギライカナイから、神が時を定めて渡つて来る、と考へてゐる。
琉球の宗教 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
又子の方より言えば仮令たとい三十年二十五年以上に達しても、父母いますときは打明け相談して同意を求むるこそ穏なれ。法律は唯極端の場合に備うるのみ。親子の情は斯く水臭きものに非ず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かつて夏目漱石、森鴎外、坪内逍遥と、大きな名をならべて、過分な幸福を授けてくださった、あたしたちの「狂言座」の三先生は、坪内先生を失って、もうみなこの世にいまさずなってしまった。
古い暦:私と坪内先生 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
陣中にやごとなき君のいましけるが常にわれらに勧めて今暫らくここに留まるべし急ぎて故郷に帰ることかはとまたわりなくものたまふにあいなく袖をも払ひかねてとかくにこころよからぬ日を過ごしぬ。
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「神よ、われらが心を遠く遠く御身の御座にまで結びつける事を許されよ。見知らぬ空にいます御身のみは、われらを慰めることを忘れ給わぬであろう。御胸にのみわれらがいこいの枕はあるのである」
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
而して到頭自己に帰りました。「盍反其本なんぞそのもとにかえらざる」で、畢竟ひっきょう其本に、自己に、わがうちいます神、やがてすべてに在す神——に帰ったのであります。帰れば其処が故郷でした。安住の地でした。私の母の歌に
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかり候ても日々物思いに沈み参らせ候 これまで何心なく目もとめ申さざりし新聞の天気予報など今いますあたりはこのほかと知りながら風など警戒のいで候節は実に実に気にかかり参らせ候 何とぞ何とぞお尊体からだ
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
下に置き小娘に向ひかくひろき家に唯一人立ちはたらき給ふは昔しの餘波なごりいたましく思ふなり殊に病人の有る樣子に見受みうけしが其方そなたの父なるか母はいまさずや其方名は何んと申す今宵限こよひかぎりの宿ながら聞まほしと云ひければ娘はたちまなみだ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
御氣色みけしきいとゞうるはしくいますが如くおもほえて
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
世に生きてこそいますなれ
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かみいます——
艸千里 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
憧憬どうけいと歓喜を与えつつ否応いやおうなしに我々をひきよせるのだ。その下に伽藍がらんがあり、諸々もろもろのみ仏がいます。朝夕多くの善男善女が祈願をささげている。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
逍遙子は汝をおほいなる心と名づけむとして猶與たゆたへり。こは神いますといふに等しからむをおそれてなり。逍遙子は汝を大理想と名づけむとして猶與へり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
東晋の仏陀跋跎羅ばーどらと法顕共に訳せる『摩訶僧祇律』三十二にいわく、仏舎衛城にいます時、南方一邑あるむらの商人八牛を駆って北方倶哆くしゃ国に到り沢中に放ち草を食わしむ
つむぎあわせ、前のめりになって、仏壇は開いたまま、——その仏壇は駒形町の往来に背を向けて、六畳一パイにはめ込みになった豪勢なもの、拝んだ姿勢が、仏のいま
茂太郎は、この場合、仔牛に向って大人びた意見を試みたが、父母います時は遠く遊ばず、という観念を、仔牛に向って吹き込もうとして、かえってくすぐったく思いました。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは神ともいますという信仰の平安をば、人生の突風にあった時失わないことであります。
います間は余の事業の成功せざる理由あるなし、見よ世の事業家の失敗するは自利のために計り栄光の神を信ぜざればなり、余は然らず、余の事業は公益のため神のためなり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)