名残惜なごりお)” の例文
旧字:名殘惜
「おじいさん、あんまりきゅうじゃないか。名残惜なごりおしいな。しかし、めでたいことで、なによりけっこうだ。無事ぶじらさっしゃい。」
なつかしまれた人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
名残惜なごりおしいけれど仕方しかたがありませんので、村人達はせめてもの心やりに、丘のふもとへ行ってみました。
キンショキショキ (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
こと今朝けさ東雲しののめたもとを振り切って別れようとすると、お名残惜なごりおしや、かような処にこうやって老朽おいくちる身の、再びお目にはかかられまい、いささ小川の水になりとも
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余は生きた池辺君の最後の記念としてその姿を永久に深く頭の奥にしまっておかなければならなくなったかと思うと、その時言葉を交わさなかったのが、はなはだ名残惜なごりおしく思われてならない。
三山居士 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たき竜神りゅうじんさんがプイと姿すがたし、それとかわりにはは指導役しどうやくのおじいさんが早速さっそく姿すがたあらわしましたので、はは名残惜なごりおしげに、それでもたいしてなみだせず、もなくわかれをげてかえきました。
そして、しばらくそこに良吉りょうきちはいますと、やがてがうすぐらくなります。するとかれ名残惜なごりおしそうにかえってゆくのでありました。
星の世界から (新字新仮名) / 小川未明(著)
名残惜なごりおしいけれど仕方しかたがない。沖に出たら、暴風雨あらしやなんかに気をつけて、身体からだを大事にするがよい。亀は万年も生きると言ってあるから、お前も長く生きて、時々は俺の事を思い出してくれよ
正覚坊 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
高野聖こうやひじりはこのことについて、あえて別にちゅうしておしえあたえはしなかったが、翌朝たもとを分って、雪中山越せっちゅうやまごえにかかるのを、名残惜なごりおしく見送ると、ちらちらと雪の降るなかを次第しだいに高く坂道をのぼる聖の姿
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
叔父おじさんは、博物館はくぶつかんほう名残惜なごりおしそうに、もう一見返みかえったが、ついおいあとからついて美術館びじゅつかんぐちをはいってゆきました。
町の真理 (新字新仮名) / 小川未明(著)
といって、良吉りょうきちからそれをかえしてってゆきました。そのあとで、良吉りょうきちはさも名残惜なごりおしそうにして、力蔵りきぞううし姿すがた見送みおくっていました。
星の世界から (新字新仮名) / 小川未明(著)
きよは、そんなことをなんともおもっていないようすで、汽車きしゃうごすと、さも名残惜なごりおしそうに、幾度いくどとなくあたまげて、とおざかってゆきました。
北風にたこは上がる (新字新仮名) / 小川未明(著)
あとの子供こどもらは、いつか、どこかへいってしまったのに、その少年しょうねんばかりは、名残惜なごりおしそうにゆうちゃんのそばから、いつまでもはなれずにいました。
銀のペンセル (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがて、おじいさんは、かえりました。そのばんは、母親ははおやむすめが、名残惜なごりおしそうに、かたかしたのでした。
おさくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「まりさん、お達者たっしゃにおらしなさい。さようなら……。」と、くもは、名残惜なごりおしげにわかれをげました。
あるまりの一生 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ははむすめ近所きんじょひとたちは、名残惜なごりおしそうに、なみだかべて、おきほうをながめていました。
青いランプ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、そのわけをいってから、かれ名残惜なごりおしそうについにこのむらはなれたのであります。
星の世界から (新字新仮名) / 小川未明(著)
仲間なかまは、口々くちぐちにいって、おじいさんのてゆく姿すがた名残惜なごりおしそうに見送みおくっていました。それから、みんなは、また、自分じぶんたちの仕事しごとにとりかかっていそがしそうにはたらいていました。
なつかしまれた人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もうあまいみつが、たくさんになかったとみえて、はちは、さも名残惜なごりおしそうに、はなのまわりを二、三べんもんでいましたが、みちまよって、うちなかへはいり、あちらの障子しょうじにつきたって、そこで
サーカスの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、わかれる時分じぶんに、さも名残惜なごりおしそうにして
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)