単調たんちょう)” の例文
旧字:單調
あおくさもない、単調たんちょう砂漠さばくなかあるいてゆくときでも、二人ふたりはなしはよくって、べつに退屈たいくつかんずるということがなかったのです。
トム吉と宝石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
が、かれ年月としつきつとともに、この事業じぎょう単調たんちょうなのと、明瞭あきらかえきいのとをみとめるにしたがって、段々だんだんきてた。かれおもうたのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「南無阿弥陀ァ仏——南無阿弥陀ァ仏」単調たんちょうな村のかなしみは、村の静寂の中に油の様に流れて、眠れよ休めよと云う様に棺を墓地へと導く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
なにを考えるともなくぼんやり夢想むそうしている時でも——彼はいつも、くちじ、ほほをふくらし、くちびるをふるわして、つぶやくような単調たんちょうおとをもらしていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
だが少年の心は単調たんちょうを喜ばぬ、かれらはそろそろゴルドンがいやになってきた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
大洋の中にいると同様に、わたしたちの日は遠い秋霧あきぎりの中に消えている地平線までとどいていた。ひたすら広漠こうばく単調たんちょうが広がっている灰色はいいろの野のほかに、なにも目をさえぎるものがなかった。
それからたずねらるるままに、わたくしははむかって、帰幽後きゆうごこちらの世界せかい見聞けんぶんしたくさぐさの物語ものがたりいたしましたが、いつも一しつじこもって、単調たんちょうなそのそのおくってははにとりては
自分じぶんは、けても、れても、この単調たんちょう景色けしきるのにきてしまった。やがて、ひろ野原のはらは、ゆきにおおわれることであろう。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゆるやかな単純たんじゅん幼稚ようちな歌で、重々しいさびしげな、そして少し単調たんちょうな足どりで、決していそがずに進んでゆく——時々長い間やすんで——それからまた行方ゆくえもかまわず進み
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
或時あるとき徒然つれづれなるにまかせて、書物しょもつ明細めいさい目録もくろく編成へんせいし、書物しょもつにはふだを一々貼付はりつけたが、こんな機械的きかいてき単調たんちょう仕事しごとが、かえって何故なにゆえ奇妙きみょうかれ思想しそうろうして、興味きょうみをさええしめていた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
らくだや、ひつじに、をつけて、かれらは、砂漠さばくなかをあるいていきました。毎日まいにち毎日まいにちおなじような単調たんちょう景色けしきがつづきました。そして、むしあつかぜいていました。
砂漠の町とサフラン酒 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この六号室程ごうしつほど単調たんちょう生活せいかつは、どこをたずねてもいであろう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いつしか、あたりは、くらくなっていった。そして、谷川たにがわみずが、あいかわらず、単調たんちょううたをうたっているのが、あたりが、しんとすると、いっそうはっきりとこえてきました。
美しく生まれたばかりに (新字新仮名) / 小川未明(著)
なんという単調たんちょうで、変化へんかのない光景こうけいであったでしょう。よくも、電燈でんとうが、こうして、おな光景こうけいらし、またつめているものだとかんがえられました。しかし、老工夫ろうこうふは、休息きゅうそくほっしていた。
かぜひかっていたり、とんぼがんでいるのをるよりほかに、変化へんかのない景色けしき物憂ものうく、単調たんちょうでありましたから、たまたまあめりのふえくと、たのしいものでもつかったように
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まったく、まりは、いまはくもうえにいて安全あんぜんでありましたけれど、毎日まいにち毎日まいにち仕事しごともなく、運動うんどうもせず、単調たんちょういていました。そして、だんだんうえこいしくなりはじめたのでありました。
あるまりの一生 (新字新仮名) / 小川未明(著)
きたくにおうさまは、なにかをたのしませ、こころよろこばせるような、おもしろいことはないものかとおもっていられました。毎日まいにち毎日まいにちおなじような、単調たんちょう景色けしきることに怠屈たいくつされたのであります。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)