)” の例文
からだて頂をし、もって万一に報ずるを思わず、かえって胸臆きょうおくほしいままにし、ほしいままに威福をす。死すべきの罪、髪をきて数えがたし。
続黄梁 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
其間そのあいだに村人の話を聞くと、大紙房と小紙房との村境むらざかいに一間の空家あきやがあつて十数年来たれも住まぬ。それは『』がたたりす為だと云ふ。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
開きれば一少艾衣類凋損ひとりのむすめきものそこねたれど妍姿傷みめそこねず問うてこれ商人のむすめ母に随い塚に上り寒食をすところを虎に搏たれ逃げ来た者と知り
ひとつの整った剣のすがたをしていて、ただ力とか、精神とかいうだけのものでして行っても、決して破り得ないものがあった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
臨済りんざいは三たび黄檗おうばくに道をたずねて、三たび打たれた。江西こうせいの馬祖は坐禅すること二十年。百丈の大智は一日さざれば一日くらわず。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
(梅あるも雪なくんば精神ならず、雪あるも詩なくんば人を俗了す。薄暮詩成りて天又た雪ふり、梅と併せて十分の春をす。)
閑人詩話 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
毒卯木どくうつぎの花が生白く咲き山葡萄の蔓が縦横に延び、雪崩なだれの跡が断層をし赤茶けた地肌を現わしているのが、荒涼たる光景を二倍にする。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
また上下の文ありて「入りては則ち髪を乱し形をやぶり、出でては則ち窈窕ようちょうして態をす……これ心を専らにし色を正すことあたわずとう」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
私徳の要ももとより重んずるところなりと説をすも、本書をもって学校の教科書となすにおいては、なお不可なるものあり。
読倫理教科書 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
小田原の城主よりも、人に害をす者に非ざれば、必ず鉄砲などにて打つことなかれと制せらるゝ故に、敢て驚かさずと云ふ。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
公子、今こそは我等がために一篇の即興詩をすことを辭せざるならめ、と問ひ掛け給へば、夫人も頷きて同じ心を表し給ふ。
なまぐさき油紙をひねりては人の首を獲んを待つなる狂女! よし今は何等の害を加へずとも、つひにはこの家にたたりすべき望をくるにあらずや。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すると禪師は、先刻既に説了す、と答へた。流石に澄ましたものだ。氏はそこで工合よく禮をして而して去つたのである。
淡島寒月氏 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
老杜ろうと登高とうこう七律しちりつにも万里悲秋常ナル百年多病独登万里ばんり悲秋ひしゅう 常に客とる、百年の多病 独りだいに登る〕の句あり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
たまた荷葉かよう披麻ひますものあり、波浪をあろうてもっず、交替去来、応接にいとまあらず、けだし譎詭けっき変幻中へんげんちゅう清秀せいしゅう深穏しんおんたいぶ。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
そして、これは一時的であるかも知れぬが、少なからぬ「疲勞」の憔悴が此大氣をして一層「悄然」の趣きを深くせしむる陰影をして居る。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
花売の娘も同じこと、いずれも夜が明けると富山の町へ稼ぎに出る、下駄の歯入、氷売、団扇売、土方、日傭取ひやといなどが、一廓をした貧乏町。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
田圃向うの黒い村をあざやかにしきって、東の空は月の出の様に明るい。何千何万の電燈でんとう瓦斯がす松明たいまつが、彼夜の中の昼をして居るのであろう。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかし少くも山陽はちとのブウドリイをして不沙汰をしてゐたのではなからうか。すねて往かずにゐたのではなからうか。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
この時に当たりキリスト教を奉ずる者は国の異同を問わず互いに相結托して強大なる団体をし、もって国家法度の外に超立するのありさまなり。
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
○ 原文の「不可以作巫医」を「巫医ふいるべからず」と読んで、「祈祷師や医者のような賤しい職業にもつけない、」
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
小春日和のうららかさに陽炎かげろうが燃えていた。海岸通りには荷役の権三ごんぞうたちが群をしてやかましく呶鳴り合って居た。外国の水夫が三々五々歩き廻っていた。
上海された男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
転げつ、倒れつ、悶々もんもんのたうち返る美人の肉塊にっかいの織りす美、それは白いタイルにさあっと拡がってゆく血潮の色を添えて充分カメラに吸収された。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかありて乾と坤と初めて分れて、參神造化のはじめ、陰と陽とここに開けて、二靈群品の祖となりたまひき
(一〇九)もと貴戚きせきことごと呉起ごきがいせんとほつす。悼王たうわうするにおよんで、宗室大臣そうしつだいじんらんして呉起ごきむ。呉起ごきはしつてわうきてこれす。
餓鬼がきが死んでくれたんで、まあ助かったようなもんでさあ。山神さんじんたたりには実際恐れをしていたんですからね」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いはんや扶桑第一の好風に遊びて、一句をさずして帰りし事、如何許いかばかりの恥辱にてやありけむ。然るも、凡傭の作調家が為すこと能はざる所を蕉翁は為せり。
松島に於て芭蕉翁を読む (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
いかにすぺいんの国民生活に、闘牛が重要な一部、じつに最も重要な一部をしているか、これでも知れよう。
狐などのしわざにやと思へば、かく荒れ果てぬれどもと住みし家にたがはで、広くつくせし奥わたりより、はしの方、稲倉いなぐらまで一一七好みたるままのさまなり。
それからすさまじいほど、垂直の断崖をしている、その下が雪田で、雪解の水は大樺の谷、それから小樺の谷へと、落ちているらしいが、そこまでは解らない。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
この山茶の字面へ花の字を加えて山茶花とし、それを従来「さざんか」(蓋し山茶花からの「さんさか」が音便によって「さざんか」に変じたものであろう)
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
一、壮大雄渾なる句は少きを以て、この種の句をす者はこれを渇望しをる人より歓迎賞美せらるべし。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
次の朝、色をした太子疾が白刃を提げた五人の壯士を從へて父の居間へ闖入する。太子の無禮を叱咤するどころではなく、莊公は唯色蒼ざめてをののくばかりである。
盈虚 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
(二) 有子曰く、その人とり孝弟(悌)にして上を犯すことを好むものはすくなし。上を犯すことを好まずして乱をすことを好むものは、未だこれ有らざるなり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
氏は色をして「君はもう大家ぢやないか、僕のことを先生なんて云ふのは止し給へ」と云つた。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
〔譯〕凡そ事をすには、すべからく天につかふるの心あるをえうすべし。人に示すのねんあるを要せず。
「さは文角ぬしにまで、かかる悪戯いたずらしけるよな。返す返すも憎き聴水、いで思ひ知らせんず」ト、みかかるをば文角は、再び霎時しばしと押し隔て、「さな焦燥いらちそ黄金丸。 ...
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
一旦次元を異にした世界に出ると、賢愚善悪の別の如きは多くの意味を持たない。禅では「不思善不思悪」の深さを説く。また「慎んで善をすことなかれ」とも教える。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そう云って、検事が指差したところを見ると、その前後二様の流血でされた形が、なんとなくまんじに似ていて、そこに真紅の表章が表われているように思われたからである。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
なすりつけられた泥人形の「平林」に向つて「平林君は果してその人々を指してごろつきと言い食い倒しという理由を見出すことが出來るか?」と色をしてきめつけられる。
中西氏に答う (旧字新仮名) / 平林初之輔(著)
斷割たちわらなまり熱湯ねつたうおろ水責みづぜめ火責ひぜめ海老責えびぜめに成とも白状なすまじと覺悟せしが御奉行樣の御明諭ごめいゆにより今ぞ我がせし惡事の段々だん/\不殘のこさず白状はくじやうせんと長庵が其決心は殊勝にも又憎體にくていなり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もしかかるときおわきが側にいると、彼女は色をして喚きたてる。言葉は勿論もちろんごく上品であって、ときに語彙ごいの狂いはあるが、然し武家の風格を崩さないことは云うまでもない。
長屋天一坊 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
名優の鼻の表現の根本基調をしているものはその芸術に対する熱誠只一つでありますが、悪魔の鼻の表現の基調をなしているものは、大胆さ、図々しさ、冷淡さ、狡猾さなぞで
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かくのごとく展転てんでんして、悪をし苦を受け、いたずらに生まれ徒に死して、輪転りんでんしてきわまりなし。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
恥ずかしながらいまだ一風をすところまで到らぬうちに、それでも、どうやらこうやら祖師孫六のやすりを使い得るようになって、一日この老いの胸にときめく血潮をおさえて
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
否な之を軽侮し之を棄却する程の無神的ゴツトロース苛刻かこくは胆大にして且つ冷淡の偽人物にあらざれば之をすことあたはざる為なり。今本篇の主人公太田なるものは可憐かれんの舞姫と恩愛の情緒をてり。
舞姫 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
此日このひ此地このち此有様このありさまなが描写べうしやとゞまりて、後年こうねんいかなる大業たいげふ種子たねとやならん、つどへる人を見て一種いつしゆたのもしき心地こゝちおこりたり、此一行このいつかう此後こののち消息せうそく社員しやゐん横川氏よこかはしが通信にくはしければ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
かくも不規則なる所夫おっとに仕え細君がく苦情をならさぬと思えば余は益々いぶかしさにえず、ついに帳番に打向うちむかいて打附うちつけに問いたる所、目科の名前が余の口より離れ切るや切らぬうち帳番は怫然ふつぜんと色を
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
美神ヹニュス合唱隊コーラスし優しき声もて歌を唱へば
あるいは色をして憤るかもしれない。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)