つかまつ)” の例文
つかまつりますが、吸物椀の中にあるのはいつも牛蒡と定っております。それで雁の吸物とは牛蒡の吸物のことで、お鷹狩りとは牛蒡狩りを
備前名弓伝 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「恐れ……恐多おそれおおい事——うけたまわりまするも恐多い。陪臣ばいしんぶんつかまつつて、御先祖様お名をかたります如き、血反吐ちへどいて即死をします。」
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
偶然のこととは云いながら、二、三怪しき事件に逢い、疑惑容易にき難きについては、先生のご意見承わりたく、左に列記つかまつり候。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「信濃一国は申すに及ばず、天下に天下を添えて賜るとも、秀頼公にそむきて不義はつかまつらじ。重ねてかかる使をせられなば存ずる旨あり」
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「路相ひらき、中土より充実つかまつり候うへ、四方へ出張でばり候形勢に相成り、東西南北とも自在に救応出来、左右前後控制仕り候ほどの形勢」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
富「へい、お召に依って權六罷出まかりでました、お目見え仰付けられ、權六身に取りまして此の上なく大悦たいえつつかまつり、有難く御礼おんれい申上げ奉ります」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「どうつかまつりまして——」支配人は軽く頭を下げた。この男は長年カアネギーに使はれてゐるだけに、よく富豪かねもちの気心を知つてゐた。
先日差上げたる私案及び貴店編輯部案を参酌さんしゃくして大体のことを決定つかまつり候間諸種の点に関し御懇談仕りたく、御多忙中恐縮に存じ候得共そうらえども
「母者、事が起った。恐らくは直ちに討手が差し向けられるに違いない。それに遅れてはうしろ指の種じゃ。宮内は一駈けつかまつる」
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
製産地直接取引ノ為メ日本ニ輸出卸値おろしねト同様多少ニかかわラズ勉強つかまつリ御便宜ノ為メ事務所トシテ日ノ出家ニ実物取揃申居とりそろえもうしおりあいだ御買上被下度くだされたく
世界ニ類ナキ銀鱗ぎんりん躍動、マコトニ間一髪、アヤウク、ハカナキ、高尚ノ美ヲ蔵シ居ルコト観破つかまつリ、以来貴作ヲ愛読シ居ル者ニテ、最近
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
良雪様、去年以来の御物語、失念つかまつらず、日々存じ出し、このたび当然の覚悟に罷成りかたじけなき次第に御座候。日ごろ御心易く御意を
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
「されば、私は私の商売と、拝見つかまつりました。そのわけは。——どちらが、理ヤラ、非ヤラ。……リヤラ、ヒヤラ。リヤラ、ヒヤラ……」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、拙僧こそ。あの時は多忙にとりまぎれて、余儀なく失礼をつかまつりました、今日はごゆるりと、お話を承りたいと存じます」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「朝鮮へ国替くにかへ仰せ付けられたく、一類眷属けんぞくこと/″\く引率して彼地へ渡り、直ちに大明だいみんに取って掛り、事果てぬ限りは帰国つかまつるまじき旨の目安めやす
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
候わば幕府諸藩一人も服さざるはこれ有るまじくと存じたてまつり候。幕府諸藩心服つかまつらずては曠代こうだいの大業は恐れながら覚束おぼつかなく存じ奉り候。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「いや、どうつかまつりまして。警官共の失態はいずれ厳しく譴責いたしますが、この上は御随意にお引取り下すってよろしいので、丁度今しがた」
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
合衆国大統領は別段飛び離れたる願いはつかまつらず、合衆国人民へ過不及なき平等の儀、御許しのほど願いおり候ことに御座候。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「勝ちたくても、負けたくても、相手が釜中ふちゅう章魚たこ同然手も足も出せないのだから、僕も無聊ぶりょうでやむを得ずヴァイオリンの御仲間をつかまつるのさ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「種々御忠言は深謝しんしゃつかまつるが、拙者には、いま申したような用がござる。妻や弟の難儀なんぎなぞ、致し方ないと諦めるばかりだ」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それからポツポツ様子を聞いてみると、その木乃伊ミイラ親爺の商売は見世物師みせものしなんだそうだ。成程と子供心に感心つかまつったね。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一めいわくつかまつるはにがにがしき御仕置おしおきにて、さんざんしほうけごんご道断なり。六月の日てりには七貧乏をかかげはちを
「いやあ、これはお安くないところをお邪魔つかまつりまして、なんとも相済みません、ねえ、こちらの御主人さんへ——」
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
翌朝御託おわびに出て昨夜は誠に失礼つかまつりましたとべるけにも行かず、到頭とうとう末代まつだい御挨拶なしにすんで仕舞た事がある。是ればかりは生涯忘れることが出来ぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
旅順陥落の翌々日、船渠せんきょ船舶等艦隊の手に引き取ることと相成り、将校以下数名上陸いたし、私儀も上陸つかまつそろ
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
入勝橋にゅうしょうばしというを渡れば山勢、渓流いよいよ非凡奇抜、ケチ臭い滝がみちの両側にあったが、名はことごとく忘却つかまつった。
機織はたおりの声が致すのは、そのほうにも聞えような。これを題に一首つかまつれ。」と、御声がかりがございました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
朶雲拝誦だうんはいしょうまずもって老兄足下そっか御勝常賀し奉候。したがつて小官無異勤学、御省念これ祈る。然れば御草稿拝見感吟の処少からず。仰せに従ひ僭評せんぴょうならびに枕山評つかまつるべく候。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「貴下の撮影にかかる雪の結晶写真の中、側面より撮影されし写真多数を拝見つかまつそうろう如何いかにして雪の結晶を垂直に立てられしや御差支おさしつかえなくば御洩おもら被下度候くだされたくそうろう
雪雑記 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
……御依頼により埋葬つかまつ……と小生とかの蕗屋の三人のみに有之これあり……右につきとくと御談合申上度もうしあげたく……郷表ごうおもて(一二字分不明)六三中村なかむら……御一読の上は必ず火中……
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「とくと、勘考かんこうつかまつりますが、府内ふないへ到着するまでには、だ未だ余日よじつもあること。到着の上にて——」
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
全く日本の床の間は色彩と自然と芸術をなし崩しに放散して、日本人の生活に重い役目をつかまつっている。
訴へ「近代、長門守殿内検地詰存外の上、あまつさへ高免の仰付けられ、四五年の間、牛馬書子令文状、他を恨み身を恨み、落涙袖をひたし、納所なっしよつかまつると雖も、早勘定切果て——」
島原の乱雑記 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
床の間に並べ有之候御位牌いはい三基は、某が奉公つかまつりし細川越中守忠興ただおき入道宗立三斎殿御事松向寺殿をはじめとし、同越中守忠利ただとし殿御事妙解院殿、同肥後守光尚みつひさ殿御三方に候えば
只今たゞいま此處これにてのろはるべくもあり、ゆるさるべくもある手前てまへ所行しょぎゃう告發こくはつもし、辯解べんかいつかまつりませう。
「何を感服つかまつるんだ。岡っ引が店賃を溜めりゃ、お上から御褒美でも出るって言うのかい」
昔話のつな金時きんときのように、頼光らいこうの枕もとに物々しく宿直とのいつかまつるのはもう時代おくれである。
半七捕物帳:01 お文の魂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
とく吟味ぎんみつかまつりしうへうけ申しあぐべしと申しければ大岡殿願ひ人七右衞門并に駕籠舁かごかき久七を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大戦前、しばらくの間独帝に仕えた折りのこと、朕を毒殺するも容易であろうといったカイゼルに対して、フランス人は不意討ちなどはつかまつりませぬと敢然といい放ったものだという。
「実は伯父ご様の御文中にも若干の学資を持たせ遣したりとあれば、それを此方こちらへ御預かり申さんとは存ぜしが、金銭の事ゆえ思召す所をはばかりて黙止たりしが残念の事をつかまつりたり」
良夜 (新字新仮名) / 饗庭篁村(著)
「それはそれは恐れ入りました。御用もあらば此方こちらより、早速推参つかまつりましょうに」
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「閣下、実は旧冬から九州へ出掛けましたので——或は新聞上で御覧になりましたことかとも愚察つかまつりまするが、此度このたび愈々いよ/\炭山坑夫の同盟罷工が始まりさうなので御座りまして——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
念のためあらかじめ御注意申上げ置き候えども、万一小生の希望に反し、明日御宿もとにてロジオン・ロマーヌイチに遭遇致すようの事これ有り候わば、小生は止むを得ず即刻退去つかまつるべく
死亡承諾書、私永々御恩顧ごおんこ次第しだい有之候儘これありそうろうまま御都合ごつごうにより、何時いつにても死亡つかまつるべく候年月日フランドン畜舎ちくしゃ内、ヨークシャイヤ、フランドン農学校長殿どの とこれだけのことだがね
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「私は昔、大殿様のお供をして熱海の温泉へまいったことがございます。もう三十何年かになりますが、その折り感心つかまつったことがございますから、ご参考のためにお話し申しあげます」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
御懇情に対し御礼の言葉を知らない、早速御返事可申上筈もうしあぐべきはずの処、俗務繁多にて延引つかまつり何とも申訳がないが、では折角の事であるから、そのお方にお目に懸らして戴こうと存ずる、当方は
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「身に覚なきはおのづから楽寝つかまつり衣裳付自堕落じだらくになりぬ。又おのれが身に心遣ひあるがゆへ夜もすがら心やすからず。すこしも寝ざればすぐれて一人帷子に皺のよらざるを吟味の種に仕り候」
西鶴と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
『よろしい!』と女王樣ぢよわうさまがおさけびになりました。『なんぢ毬投まりなげをつかまつるか?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
恐縮つかまつったというところを読んで、何だかにやりとしてしまいました。
ありがたいやら嬉しいやら、中席十日を限ってさらに御礼興行つかまつりますれば、銀座柳も蘇る今日、昔恋しい三遊柳、当時の繁昌さけばしめたまえと、新東京の四方様方に、伏してお願い申し上げます。
寄席行灯 (新字新仮名) / 正岡容(著)