乗出のりだ)” の例文
旧字:乘出
白襯衣君が、肩をそびやかして突立つったって、窓から半身はんしん乗出のりだしたと思うと、真赤な洋傘こうもりが一本、矢のように窓からスポリと飛込とびこんだ。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひざずつ乗出のりだしたおせんは、ほほがすれすれになるまでに、菊之丞きくのじょうかおのぞんだが、やがてそのは、仏像ぶつぞうのようにすわってった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「むむ。」と、市郎も思わず蒲団から乗出のりだした。彼も𤢖に対して、ピジョン氏と同じような経験をっているからであった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
銀貨狼藉さてそれから船が出てずっと北の方に乗出のりだした。その咸臨丸かんりんまると云うのは百馬力の船であるから、航府中、始終石炭をくと云うことは出来ない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
酒を吸筒すいづゝへ詰込みまして、神田の昌平橋しょうへいばしの船宿から漁夫りょうしを雇い乗出のりだしましたれど、新三郎は釣はしたくはないが
「驚くな——たって、眼なんか据えて乗出のりだされちゃ大概肝を冷やすぜ、旦那、あまり結構な人相じゃねえ」
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ただ飛来とびく弾丸たまに向い工合ぐあい、それのみを気にして、さて乗出のりだしていよいよ弾丸たまの的となったのだ。
署長が思わず乗出のりだした。——そして志津子から昼間の話をくわしく聞取ききとると
海浜荘の殺人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
みづつて、さつあみ乗出のりだしてひろげたなかへ、天守てんしゆかげが、かべ仄白ほのじろえるまで、三重さんぢうあたりをこずゑかこまれながら、歴然あり/\うつつてた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おせんのはだかのぞこうッてえのは、まず立派りっぱ智恵ちえだがの。おのれをわすれて乗出のりだした挙句あげく垣根かきねくびんだんじゃ、折角せっかく趣向しゅこうだいなしだろうじゃねえか
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
はなしはいよいよ本題にって来たから、私もいよいよ熱心に、「え、それはういう理屈だね、んな評判があるのだね」と、思わず身を乗出のりだして相手の顔を覗き込むと
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
安政二年に長崎におい和蘭オランダ人から伝習したのがそもそも事の始まりで、そのぎょうなって外国に船を乗出のりだそうと云うことを決したのは安政六年の冬、すなわち目に蒸気船を見てから足掛あしかけ七年目
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
十歩に一棧と言った恐ろしく洒落しゃれた建物ですが、一番上の母屋おもやとも言うべき高楼は、千尋ちひろの荒海の上に臨んだ、大岩石の上へ乗出のりだすように建てられたもので、その展望台から下を臨むと
博士は乗出のりだすようにしながら
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
少々せう/\怪我けがぐらゐはする覚悟かくごで、幻覚げんかく錯視さくしかとみづかあやしむ、そのみづいろどりに、一だんと、えだにのびて乗出のりだすと、あま奇麗きれいさに、くらんだのであらう。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「字が書いてありましたか。」と、忠一は思わず乗出のりだした。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
皆まで聴かずに忠弘は乗出のりだします。
祐吉はぐいと身を乗出のりだして
天狗岩の殺人魔 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あゝ風情ふぜいとも、甘味おいしさうとも——その乗出のりだして、銀杏返ゐてふがへし影法師かげばふし一寸ちよつとしづまつたのをばうとした。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お葉はいよいよ驚いて、縁から半身はんしん乗出のりだした。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大膳正は乗出のりだしました。
謀叛人むほんにんが降つて湧いて、まる取詰とりつめたやうな騒動だ。将軍の住居すまいは大奥まで湧上わきあがつた。長袴ながばかますべる、上下かみしも蹴躓けつまずく、茶坊主ちゃぼうずは転ぶ、女中は泣く。追取刀おっとりがたなやり薙刀なぎなた。そのうち騎馬で乗出のりだした。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と若い女が、ぢやぶ/\、ぢやぶ/\と乗出のりだす中に、おびえた声する。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つかまえて支えて、乗出のりだしても、溝に隔てられて手が届かなかった。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みょう。」と、又乗出のりだした山伏やまぶし
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いはあたま半身はんしん乗出のりだして
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)