鼠入ねずみい)” の例文
そこで台所のすみに置いてある「鼠入ねずみいらず」の戸を音のしないようにそっとあけて見た。が、そこにもやはり何もなかった。いつもあるはずの砂糖壺さとうつぼすらも。
手廻りの道具もえた。新吉がどこからか格安に買って来た手箪笥や鼠入ねずみいらずがツヤツヤ光って、着物もまず一と通りそろった。保険もつければ、別に毎月の貯金もして来た。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
すると台所の板の間に鼠入ねずみいらずがあるのに気がついて
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
家には鼠入ねずみいらずだの、長火鉢ながひばちだの、箪笥たんすなどが一通りそろえられていた。だから、たしかに今は、私の知っていた頃の父よりは遥かに楽な生活をしているのに相違なかった。
で、鼠入ねずみいらずももうなくなった。長火鉢ながひばちも売られてしまった。金に替えられるものは片っ端から売りとばされた。そしてとうとう、私の番になって来た。つまり、私を女郎屋じょろうやの娘としてだ。