鰌髭どじょうひげ)” の例文
官吏らしい鰌髭どじょうひげの紳士が庇髪ひさしがみの若い細君をれて、神楽坂かぐらざかに散歩に出懸けるのにも幾組か邂逅でっくわした。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
と一人めにして、その上に、新妻にいづまを後妻になれ、後妻にする、後妻の気でおれ、といけ洒亜々々しゃあしゃあとして、髪を光らしながら、鰌髭どじょうひげの生えた口で言うのは何事でしょうね。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鰌髭どじょうひげをはやし、不潔な陋屋の臭いが肉体にしみこんでいる。垢に汚れた老人だ。通訳が、何か、朝鮮語で云って、手を動かした。腰掛に坐れと云っていることが傍にいる彼に分った。
(新字新仮名) / 黒島伝治(著)
京助は彼と同級生で、今年の春敏子と結婚し、郊外の文化住宅にすまって居た。彼は別にこれという特徴のない平凡人であった。平凡人の常として、彼はふとって、鼻の下に鰌髭どじょうひげを貯えて居た。
死の接吻 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)