鮫肌さめはだ)” の例文
胸にみつく歯や、ざらざらした鮫肌さめはだや、阿片の匂いのした寒い鼻息などの波の中でちらちらと浮き始めると、彼女は寝返り打って、ふっと思わず歎息した。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
が、それは雪と言ふよりも人間の鮫肌さめはだに近い色をしてゐた。わたしはかう言ふ山脈を見ながら、ふとあのモデルを思ひ出した、あの一本も睫毛まつげのない、混血児あひのこじみた日本の娘さんを。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
白く肌理きめこまかい金五郎の皮膚にくらべて、友田の身体は、鮫肌さめはだで、どす黒い。そこへ、両腕から背中一面にかけて、自来也じらいやの彫青をしているので、よごれたシャツでも着ているようである。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
またあのざらざらした鮫肌さめはだや、くさい大蒜にんにくの匂いのした舌や、べったり髪にくっついた油や、長い爪や、咬みつく尖った乱杭歯らんぐいばやが——と思うと、もう彼女はあきらめきった病人のように
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)