鬼怒きぬ)” の例文
やがて眼界にわかに開けた所へ出れば、重畳ちょうじょうせる群山波浪のごとく起伏して、下瞰かかんすれば鬼怒きぬの清流真っ白く、新しきふんどしのごとく山裾やますそぐっている。
若し将門が攻めて行つたのをふせいだものとしては、子飼川をわたつたり鬼怒きぬがはを渡つたりして居て、地理上合点が行かぬ。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
鬼怒きぬ川に我行き立てば、なみ立てる桑のしげふは、岸のへになべても散りぬ、鮭捕りの舟のともしは、みなかみに乏しく照りぬ、たち喚ばひあまたもしつゝ、しばらくにわたりは超えて
長塚節歌集:2 中 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
鬼怒きぬの水源なる絹沼といへる湖水なりと聞きて、そゞろに神往きたま飛ぶに堪へざりしが、其の後日光山志を繙き、栗山郷を記するの條に至り、此地窮谷の間にありて、耕すべきの地極めて少く
日光山の奥 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
大原という処は鬼怒きぬ水電工事の中心である。ために入込はいりこんでいる工夫こうふの数は三千人程あるという話だ。山間の僻地へきちの割には景気がいいらしい。商賈しょうこもドシドシ建つようだし、人間の往来も多い。