髪油かみあぶら)” の例文
まだ、女の髪油かみあぶらが、生々なまなまと、曇っている。見つめていると、ありし日の女の姿が、ぼっと、眸にひろがって来る気さえする。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
香木五十八種はもとより、市中にて売出しおります髪油かみあぶら匂油においあぶらいっさい。ひとまとめにしてお差しいれを願います。
顎十郎捕物帳:16 菊香水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
髪油かみあぶらを手のついでに顔へも塗ったような、頬の光った楽長が近づいて来て何かお好みの曲はございませんでしょうかと質問したので、私が一同を代表して「ハリファックスへ行くように」と勧告した。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
まだ前髪まえがみをとったばかり、青々とした月代さかやきに、髪油かみあぶらのうつりがいい。小刀を前差にして、はかまひだをとった形、いかにもなつめの眼をひいたろうと思われる。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
髪油かみあぶら薔薇香そうびこうは」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)