風土記ふどき)” の例文
飯倉の西にあたる麻布勝手ヶ原は、太田道灌が江戸から兵を出すとき、いつもここで武者揃えをしたよし、風土記ふどきに見えている。
ひどい煙 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
いはゆる風土記ふどきであつて、その内、出雲風土記(完本)、播磨風土記、常陸風土記などが残つてゐる。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
余二十年前丸山氏の家に遊笻いうきようをとゞめし時、祖父が宝暦の頃の著述ちよじゆつ也とて、越後名寄なよせといふしよを見せられしに、三百巻自筆じひつ写本しやほん也。名寄とはあれど越後の風土記ふどきなり。
出雲の阿菩大神あほのおおかみがそれを諫止かんししようとして出立し、播磨はりままで来られたころに三山の争闘が止んだと聞いて、大和迄行くことをやめたという播磨風土記ふどきにある伝説を取入れて作っている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
豊後・肥前・日向等の『風土記ふどき』に、土蜘蛛つちぐも退治の記事の多いことは、常陸・陸奥等に譲りませず、更に『続日本紀しょくにほんぎ』の文武天皇二年の条には太宰府だざいふちょくして豊後の大野、肥後の鞠智きくち
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「念のために申しあげておきますがね、江戸の洲崎は洲崎の浜などとは言わないんです。昔からただの洲崎、江戸の風土記ふどきには浜などと名のつくところはそうざらにはないんです。なんと、ご存じでしたろうか」
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)