顴骨くわんこつ)” の例文
私がやつと湿つぽい蒲団から首を出すと、「高等乞食」は、その顴骨くわんこつが突出た顔を私とおみくじ屋とへかはるがはる向けて
大凶の籤 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
うす痘痕いものある顔は、顴骨くわんこつばかりあらはに痩せ細つて、皺に囲まれた唇にも、とうに血の気はなくなつてしまつた。
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
板のやうな掛蒲団をあはせの上にかぶつて禿筆ちびふでを噛みつゝ原稿紙にむかふ日に焼けてあかゞね色をしたる頬のやつれて顴骨くわんこつの高く現れた神経質らしいおな年輩としごろの男を冷やかに見て
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
それは氣性者きしやうものによくある線の堅さから來る感じで、二十八の豊滿な大年増、鼻も顴骨くわんこつも高くあごが開いて、決してみにくいといふ程でなくとも好感の持てる顏ではありません。
二人は取組合とつくみあつた。八は酒で体を悪くしてからは、余り力が出ない。又別当太吉も、色の白い、鼻と顴骨くわんこつあごとが顔に四箇の突角を形づくつてゐる男で、これも余り強くはない。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
顏も顴骨くわんこつが稍出張つてゐるのが疵であるが、眉や目の間に才氣が溢れて見える。伊織は武藝が出來、學問の嗜もあつて、色の白い美男である。只此人には肝癪持と云ふ病があるだけである。
ぢいさんばあさん (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)