額越ひたえごし)” の例文
紳士は俄然がぜん大口をいて肩を揺ッてハッハッと笑い出し、丸髷の夫人も口頭くちもとしわを寄せて笑い出し、束髪の令嬢もまた莞爾にっこり笑いかけて、急に袖で口をおおい、額越ひたえごしに昇の貌を眺めて眼元で笑った。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「もウ咄したか、まだ咄さぬか」と思えば胸も落着かず、臆病おくびょう好事ものずきな眼を額越ひたえごしにそッと親子へ注いでみればお勢は澄ました顔、お政は意味の無い顔、……咄したとも付かず、咄さぬとも付かぬ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)