頸低うなだ)” の例文
銀次が無言のまま頭を下げてお金と徳利を受取ると、小女はよろめくように潜戸の端にりかかって頸低うなだれた。
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
悲し気に頸低うなだれると、今まで大切に抱えていた鍬を力なく取落して、自分の部屋へ引込んで行った……というのが、この遺言書に出ている呉一郎の治療順序の説明だ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
思い出したように頸低うなだれた者が四五人。軍服の袖を顔に当ててススリなきを初めた者が二三人……。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その顔を草川巡査は穴の明く程凝視したので、一知はイヨイヨ青くなって頸低うなだれた。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そうして一方は元気よく、勝誇ったように……一方は屠所としょの羊のように、又は死の投影のように頸低うなだれて、気絶した仲間をたすけ起し扶け起し、月光の真下で別れ別れになって行った。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのうちにダンダン感動して来ると、藤六の血色のいい顔が蒼白くしなびて、眉間に深いしわが刻み出されて、やがてガックリと頸低うなだれると、涙らしいものをソッと拭いているような事もあった。
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
シオシオと頸低うなだれて出て行った。外はモウ真暗まっくらになっていた。
芝居狂冒険 (新字新仮名) / 夢野久作(著)