頬髯ほほひげ)” の例文
扉を邪慳じゃけんに締めるなら締めろ。そんなことは平気だ。窓ガラスを透して、頬髯ほほひげやした貴様の支配人づらが、唇をもぐもぐさせているのを一瞥いちべつする。
僕はこの心もちをのがれる為に隣にゐた客に話しかけた。彼は丁度獅子のやうに白い頬髯ほほひげを伸ばした老人だつた。のみならず僕も名を知つてゐた或名高い漢学者だつた。
歯車 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
高い段鼻、二重顎、巨大な出眼、酷薄らしい口、荒い頬髯ほほひげを逆立てている。その上額に向こう傷がある。これが人相を険悪に見せる。広袖ひろそでを着、胸をくつろげ、頬肘を突いて寝ころんでいる。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)