革袴かわばかま)” の例文
短い革袴かわばかまに稽古着一枚、これがその昔、孔雀くじゃくのような振袖姿を、春風に吹かせて歩いた新九郎かと思えば涙ぐましくもなる。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう呼ばれた時は、もう革袴かわばかま穿いた二人の木戸役人に、武蔵は、懐中ふところから背や腰の——体じゅうを撫でまわされていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今しがた門限の六刻むつが鳴って、役所の中には、疲れた暮色が沈みかけていた。嵐がぶつかッて来たようなそこの物音に、革袴かわばかまの番士は、びっくりしたように飛び出して
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
出会いがしらに柑子坂こうじざかの上から降りてきた編笠の人があった。五倍子染ふしぞめの着物を着ており、羽織はまとわず、革袴かわばかまに草履という身ごしらえ——もちろん大小は横たえている。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
薄色の麻の小袖にたすきをかけ、革袴かわばかまの股立ち取り、客呼びの源七が合図の太鼓と一緒に、いつでも賭け試合の対手あいてに飛び出せるばかりに身拵えをして、破れ扇を、バタバタさせていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その内側から、革袴かわばかまをつけた侍が、いかめしい声で
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)