面貌おもて)” の例文
年紀としのころは二十七八なるべきか。やや孱弱かよわなる短躯こづくりの男なり。しきり左視右胆とみかうみすれども、明々地あからさまならぬ面貌おもてさだかに認め難かり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
線をし、筋を為し、円を描き、方形を形成かたちづくり、流れこごり、紙帳の面貌おもては、いよいよ怪異を現わして来た。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
面貌おもては深い熊谷笠くまがいがさに隠して唇元くちもとも見せないが、鉄納戸てつなんどの紋服を着た肩幅広く、石織の帯に大鍔の大小を手挟たばさみ、菖蒲革しょうぶがわの足袋に草履がけの音をぬすませ、ひたひたと一巡りしてから
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)