靡然びぜん)” の例文
ああわが邦人の美術文学に対する鑑識の極めて狭小薄弱なる一度ひとたび新来の珍奇に逢著ほうちゃくすれば世を挙げて靡然びぜんとしてこれにおもむき、また自己本来の特徴を顧みるの余裕なし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ブウシエをわらつて俗漢とす。あにあへて難しとせんや。遮莫さもあらばあれ千年ののち、天下靡然びぜんとしてブウシエのけんおもむく事無しと云ふ可らず。白眼はくがん当世におごり、長嘯ちやうせう後代を待つ、またこれ鬼窟裡きくつりの生計のみ。