雷鳥らいちょう)” の例文
雷鳥らいちょうは影も見せない、風死して動くものもない、身も魂もこの空気の中にとろけてしまいそうだ、併しいつまで経っても、融けもしなければ揺ぎもしないものは、穂高と槍である
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
いのちが助かりたいの一心で、丘のいただき近くまでよじのぼってくると、不意に目の前へ、さるかむささびか雷鳥らいちょうか、上なる岩のいただきから一そくとびにぱッととびおりてきたものがある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思い懸けなくも雷鳥らいちょうが一羽、私の直ぐ前のところにあらわれた。茶色の、鳩ほどの、丸い形をした、今は飛ぶことを忘れた鳥は、偃松の実をついばんでいたが、啄み飽きて遊んでいるところと見える。
烏帽子岳の頂上 (新字新仮名) / 窪田空穂(著)