雨外套あまぐわいたう)” の例文
が、長崎を立つ段になると、僕自身うつかり上野屋うへのや雨外套あまぐわいたうを忘れて来てしまつた。菊池の嬉しがるまいことか、忌々いまいましくも大笑ひをしていはく、「君もまた細心さいしんは誇れないね。」(同上)
続澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しかもやうやく帰つて来ると、雨外套あまぐわいたうも一人では脱げない程、酒臭い匂を呼吸してゐた。信子は眉をひそめながら、甲斐甲斐かひがひしく夫に着換へさせた。夫はそれにも関らず、まはらない舌で皮肉さへ云つた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)