雜遝ざつたふ)” の例文
新字:雑遝
モンテ、ピンチヨオは餘りに雜遝ざつたふすべければ、やゝ遠きモンテ、マリヨへ往かばや。こゝより市門まではいと近ければといふ。
さて島田驛の人は定めて普門寺へ十念を受けに往くであらう。苾堂の親戚しんせきが往く時雜遝ざつたふのためにくるしまぬやうに、手紙と切手とを送る。最初に往く親戚は手紙と切手とを持つて行くが好い。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
異國人ことくにびとにて此祭見しことなきものは、かゝる折の雜遝ざつたふを想ひ遣ること能はざるべし。立錐りつすゐの地なき人ごみに、燃やす燭の數限なければ、空氣は濃く熱くのみなりまさりぬ。
今まで列を成したりし馬車は漸く亂れて、街上の雜遝ざつたふは人聲の噪しさと共に加はり、空の暗うなりゆくを待ち得て、人々持たる燭に火を點せり。中には一束を握りて、こと/″\く燃せるもあり。