長袖ちょうしゅう)” の例文
磊落不軌らいらくふきの性はながく長袖ちょうしゅうの宮づかえを許さず、ふたたび山河浪々の途にのぼって、まず生を神州にうけた者の多年の宿望をはたすべく
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「倒幕の大事などが、長袖ちょうしゅうの神学者や、公卿くげばかりではかれるものではない。黒幕がある! 傀儡師かいらいしがある! たしかにある!」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしてその百貨の走集するところとなるゆえんのものはその位置を得たるをもってなり。それ長袖ちょうしゅうよく舞い、多銭よくう。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「やはり、やはり長袖ちょうしゅう者だ」腕を組み、さっきから一言も口を利かなかった金五が、鋭く切込むように云った
城中の霜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
学者はいわゆる長袖ちょうしゅうの身分たらんこと、これまた我が輩の祈るところにして、これを要するに、学問をもって政事の針路に干渉せず、政事をもって学問の方向を妨げず、政事と学権と両立して
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「まことに、異態いてい長袖ちょうしゅうでございましたな。公卿と申せば、ただなよかに、世事も知らぬ気にとりすましている貴人かとのみ、心得ておりましたるに」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
政治に関してはかつて儒臣のくちばしをいれしめず、はなはだしきはこれを長袖ちょうしゅうの身分と称して、神官、僧侶、医師の輩と同一視して、政庁に入れざるのみならず、他士族とよわいするを許さざるの風なりき。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それに、何といっても、敵は、伊勢の国司として、顕家あきいえ以来のふるい名族だ。——今の大納言具教だいなごんとものりという当主も、長袖ちょうしゅうの家の子とはあなどれぬ。衣冠を脱した甲冑かっちゅうの英雄だ。国中の名望もあるらしいし
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)