長者町ちょうじゃまち)” の例文
轢死した及川武太郎おいかわたけたろうはお玉の実兄で、千葉県の長者町ちょうじゃまちで一時は小学校の校長をやったり村長を務めたりしたことのあった男だが
暴風雨に終わった一日 (新字新仮名) / 松本泰(著)
山崎美成は下谷長者町ちょうじゃまちに住した薬種問屋長崎屋の主人で通称信兵衛、後に久作、字は久卿、好問堂と号した。博識を以て知られた雑学者である。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
まだ下谷したや長者町ちょうじゃまちで薬を売っていた山崎の家へ、五郎作はわざわざ八百屋やおやしちのふくさというものを見せに往った。ふくさは数代まえ真志屋ましやへ嫁入したしまという女の遺物である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
美「わちき久振ひさしぶりですから長者町ちょうじゃまち福寿庵ふくじゅあんへ往っておらいさんに逢って、義理をしてきたいんですが、帰りに他家ほかへ寄っておまんまを食べるなら、福寿庵へって遣っておくんなさいよ」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かつて江湖詩社の盟主であった市河寛斎は既に文政の初に没して、下谷長者町ちょうじゃまちなる旧邸の門前にはその男米庵べいあんの書を請うものが常に市をなしていた。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)