長物ちょうぶつ)” の例文
この世に無用の長物ちょうぶつは見当らぬ。いわんや、その性善にして、その志向するところ甚だ高遠なるわが黄村先生にいてをやである。
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
この花は、種子たねを生ずるために存在している器官である。もし種子を生ずる必要がなかったならば、花はまったく無用の長物ちょうぶつで、植物の上にはあらわれなかったであろう。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
その他の特色を云うと、玄関の前に大きな鉄の天水桶てんすいおけがあった。まるで下町の質屋か何かを聯想れんそうさせるこの長物ちょうぶつと、そのすぐ横にある玄関のかまえとがまたよく釣り合っていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こんな風に考えると劇なんてものも案外無用の長物ちょうぶつじゃないかも知れないよ
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
かくの如く彼ら革命にさきだち、あるいは革命と同時に、またあるいはその中幕以後においては、革命の長物ちょうぶつたることありて、時と所との長短遠近あるにかかわらず、その予言者たるの実を変ぜざるなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ぐん官吏共かんりどもでもみなつま無用むよう長物ちょうぶつだ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
したがってそのトゲもまったく無用の長物ちょうぶつとなっている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)