長汀ちやうてい)” の例文
げにや榮華は夢かまぼろしか、高厦かうか十年にして立てども一朝の煙にだも堪へず、朝夕玉趾ぎよくし珠冠しゆくわん容儀ようぎたゞし、參仕さんし拜趨はいすうの人にかしづかれし人、今は長汀ちやうていの波にたゞよひ、旅泊りよはくの月に跉跰さすらひて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
あしのちかづくと、またこの長汀ちやうていかぜさわやかに吹通ふきとほして、人影ひとかげのないものしづかさ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
三保みほの入江にけぶり立ち、有渡うどの山かげおぼろにして見えわかず、袖師そでし、清水の長汀ちやうてい夢の如くかすみたり。世にもうるはしきけしきかな。われは磯邊いそべの石に打ちよりてこしかた遠く思ひかへしぬ。
清見寺の鐘声 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)