釣船つりぶね)” の例文
思ひの外使はおそくなつたやうですが、生憎あいにくあつしは釣船つりぶねに乘つて沖へ出て居て、片瀬の宿へ戻つたのは夜中近くなつてからでせう、——ところが、片瀬の宿は、引つくり返る騷ぎです
首尾の松の釣船つりぶね涼しく椎木屋敷しいのきやしき夕蝉ゆうせみ(中巻第五図)に秋は早くも立初たちそめ、榧寺かやでら高燈籠たかとうろうを望む御馬屋河岸おんまやがし渡船とせん(中巻第六図)には托鉢たくはつの僧二人を真中まんなかにして桃太郎のやうなる着物着たる猿廻さるまわ
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
またおも釣船つりぶね海人あまの子を、巖穴いはあなかぐろふ蟹を
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「飛んでもない。あつしは釣船つりぶねから這ひ上がつたばかり、酒なんか呑んぢや居ません、——考へて見ると、相模屋の若旦那は、夜道が淋しくなつて、あつしの追ひつくのを待つて居たんですね」