釘隠くぎかくし)” の例文
旧字:釘隱
それでも建ちは割合に高くて、簡単な欄間もあり銅の釘隠くぎかくしなども打ってある。その釘隠が馬鹿に大きいがんであった。勿論もちろん一寸見たのでは木か金かも知れないほど古びている。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
長押作なげしづくりに重い釘隠くぎかくしを打って、動かぬ春のとこには、常信つねのぶ雲竜うんりゅうの図を奥深く掛けてある。薄黒く墨を流した絹の色を、かくに取り巻く紋緞子もんどんすあいに、びたる時代は、象牙ぞうげの軸さえも落ちついている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)