酉様とりさま)” の例文
旧字:酉樣
酉様とりさまの鳥居と筋向いになって、もとの処に仮普請かりぶしんの堂をとどめているが、しかし周囲の光景があまりに甚しく変ってしまったので、これを尋ねて見ても
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
日に増し寒さが厳しく、お酉様とりさまの日も近づくと、めっきり多忙いそがしくなるので、老人は夜業よなべを始め出す。私もそばで見ている訳にいかず自然手伝うようになる。
その横からお酉様とりさまへ行く道になるのですが、私はお参りしたことがありません。いつもひどい人出だとのことで、その酉の日には、大分離れたここらまで熊手くまでを持った人が往来します。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
「金と知恵は品切れだよ、お酉様とりさまで少し仕入れようと思って居るところだ」
歳末になると、父は車を引張ってお酉様とりさまの熊手を売りにゆく。いろんな張子を一年かかって拵え、家の中を胡粉ごふんの臭いでいっぱいにし、最後に金箔きんぱくをつけて荷車に積んで売りに行ったものだ。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
「そら、お酉様とりさまの先さ。太郎稲荷の在るところさ。」
来訪者 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)