遁亡とんぼう)” の例文
が、その一面においては、どういうものか、せんを越されたというような気もした。自分ではまだ遁亡とんぼうしようとも何とも思っていなかった。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
「尊氏に筑紫つくしを踏ますな。——遁亡とんぼうの将尊氏ごときに、一歩でも九州を踏み荒させてなるものか」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はうなじの上に振上げられた白刃はくじんをまざまざと眼に見るような気がした。同じように感ずればこそ、理兵次もはじを含んで遁亡とんぼうしたものに相違ない。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
空家を攻めても効はないが、歴世十何代、足利義昭にいたって、将軍家はみずから職をなげうって遁亡とんぼうした。室町幕府はここに終りを告げた。一攻め押して、ときの声をあげろ。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)