通町とおりちょう)” の例文
おやじといっしょに油町あぶらまちから通町とおりちょうへ散歩に出ると、向うから大きな声をして女の子はよしかな、女の子はよしかなと怒鳴どなってくる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのほかまだその通町とおりちょう三丁目にも一つ、新麹町しんこうじまちの二丁目にも一つ、それから、もう一つはどこでしたかな。とにかく、諸方にあるそうです。
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
通町とおりちょうでは暮の内から門並揃かどなみそろい注連飾しめかざりをした。往来の左右に何十本となく並んだ、軒より高いささが、ことごとく寒い風に吹かれて、さらさらと鳴った。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
帰りに山嵐は通町とおりちょうで氷水を一ぱいおごった。学校で逢った時はやに横風おうふうな失敬な奴だと思ったが、こんなにいろいろ世話をしてくれるところを見ると、わるい男でもなさそうだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先達せんだっ通町とおりちょうで飲んだ氷水の代だと山嵐の前へ置くと、何を云ってるんだと笑いかけたが、おれが存外真面目まじめでいるので、つまらない冗談じょうだんをするなと銭をおれの机の上にき返した。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鷹台町たかのだいまちから市内に這入って、古城町こじょうまちを通って、仙石町せんごくまちを曲って、喰代町くいしろちょうを横に見て、通町とおりちょうを一丁目、二丁目、三丁目と順に通り越して、それから尾張町おわりちょう名古屋町なごやちょう鯱鉾町しゃちほこちょう蒲鉾町かまぼこちょう……
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)