退避たじ)” の例文
お延は不意を打たれて退避たじろいだ。津田の前でかつて挨拶あいさつに困った事のない彼女の智恵が、どう働いて好いか分らなくなった。ただ空疎な薄笑が瞬間のきょたした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
津田はこのでたらめの前に退避たじろぐ気色けしきを見せた。お秀の所でそくなったにがい経験にもりず、また同じ冒険を試みたお延の度胸はむくいられそうになった。彼女は一躍して進んだ。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)