追懐おもひで)” の例文
旧字:追懷
二人の話は其追懐おもひでで持切つた。他人が居なければ遠慮もらず、今は何を話さうと好自由すきじいうである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
一雫も零さないやうにするのは、何も追懐おもひでの涙が神聖なからでは無い。成るべく早く瓶を詰めて、喪服を着更きかへてしまひたいからだ。多いなかには亭主の事を追懐おもひだしても一向涙なぞ出ないのがある。
匂香にほひがあつく、『とき』の呼吸いきまたたくゆる『追懐おもひでよ。 ...
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
斯ういふ追懐おもひでの情は、とは言へ、深く丑松の心を傷けた。平素しよつちゆうもう疑惧うたがひの念を抱いて苦痛くるしみの為に刺激こづき廻されて居る自分の今に思ひ比べると、あの少年の昔の楽しかつたことは。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かくてまたわれはきく追懐おもひでの色とにほひに
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)