辰刻いつつ)” の例文
ちょうど辰刻いつつ(八時)を打ったばかり、——お早うとも言わず飛込んだ、子分のガラッ八の顔は、それにしては少しあわてております。
ものの半日あまり、枯木寒巌こぼくかんがんといったていで、半眼をとじながら黙々然々もくもくねんねんとしていたが、お調べも間もない辰刻いつつになると、とつぜんカッと眼を見ひらいて
顎十郎捕物帳:16 菊香水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
木場の大旦那で、万両分限ぶげんの甲州屋万兵衛は、今朝、卯刻むつ半(七時)から辰刻いつつ(八時)までの間に、風呂場の中で殺されていたのです。
おお、もう辰刻いつつか。あまりゆっくりかまえてもいられねえ。
あくる日平次が谷中の清養寺へ行ったのは、まだ辰刻いつつ(八時)少し過ぎ、お類が朝の膳を片づけて、寺男の弥十は庭の草をむしり始めた時分でした。
一方は銭形平次と八五郎、赤羽橋有馬屋敷の角、お濠端ほりばた葭簀張よしずばりの中に、辰刻いつつ(午前八時)過ぎから眼を光らせました。
辰刻いつつ(八時)過ぎになっても起きて来なかったので、気に入りの下女のお仲が二度も三度も廊下から呼んでみましたが、なんの返事もないばかりでなく
銭形平次捕物控:130 仏敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
元の通り畳んで神棚に供え、自分は一と晩その下で寝た事、翌る日は辰刻いつつ半(九時)頃、包みのまま持ってお屋敷へ行ったことまで、手に取るごとく解りました。
明神下から向島の小梅まで、平次も八五郎も汗になって辿り着いたのは、辰刻いつつ(八時)少し回った頃。
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
明日、早立ちで、辰刻いつつ(八時)か——遅くも巳刻よつ(十時)にはこの御屋敷へ御還りになろう。
そんな事を言いながら、二人が宮永町へ着いたのは、もう辰刻いつつを過ぎて居りました。
「三次、もう辰刻いつつ(八時)だぜ、起きろ、——銭形の親分が、手前てめえに逢いてえとよ」
「佐の市のお袋が卯刻むつ(六時)前に開けた。輪鍵はちゃんと内側へ掛っていたそうだよ。辰刻いつつ(八時)時分にお美乃が帰って来て、お六の死骸を見付けたのは辰刻半(九時)頃だろう」
ぼんやり下谷したやの方を眺めていると、ツイ二三十間先——家の数にして五六軒目の二階の縁側に出してある行灯あんどんが、辰刻いつつ半(九時)過ぎだというのに明々と灯が入っているじゃありませんか
其の日の辰刻いつつ頃、人目の多い場所ではあり、それに白昼の捕物ですから、今度は万に一つも失策しくじりは無い積り、相沢半助は確かに此処で「寺荒し」の姿を見たという権次と、先刻正護院で
よしよし、それでだいぶ判ったようだ。ところで、八、横山町の町役人に会って、明日の辰刻いつつ(午前八時)前、磯屋の主人貫兵衛が、御手当になるはずだ、万事抜かりのないように仕度を
ともかくも一段落を付けたのは辰刻いつつ(午前八時)過ぎ、川一つ距てた組屋敷から、わざわざ同心の出役しゅつやくがあって、検屍を済ませたのは辰刻半、浪花屋の内外は煮えくり返るような騒ぎです。
まだ辰刻いつつ(午前八時)少し過ぎ、家の中はシーンと鎮まり返っておりますが、その静寂のうちに、鬱陶うっとうしい不安と、恐ろしい疑惑がはらんでいることを、物馴れた平次は嗅ぎ出しておりました。
その晩は何事もなく明けて、あくる日の朝、辰刻いつつ(八時)少し廻った頃——。
神田から橋場へ——、恵大寺に着いたのは辰刻いつつ(八時)頃。
「ちょいと、起きて下さいな。私が来て上げたのに、寝ているって法はないワ。鼻から提灯ちょうちんなんか出してさ、狸ならもう少し綺麗事にするものよ、——もう辰刻いつつ(八時)過ぎじゃないの、ちょいと八さんてば」
「今朝でしたよ、辰刻いつつ(八時)頃でしょうか——」
この話の始まったのはちょうど辰刻いつつ半(九時)。