軒別けんべつ)” の例文
と、いったことを思って山吹町の通りからいっさんに小石川の方に出て伝通院まで行って、あすこの裏あたりのごみごみした長屋を軒別けんべつ見て廻った。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
谷中やなかから上野を抜けて東照宮の下へ差掛さしかかった夕暮、っと森林太郎という人の家はこの辺だナと思って、何心なにごころとなく花園町はなぞのちょう軒別けんべつ門札もんさつを見て歩くとたちまち見附けた。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
軒別けんべつさがして歩いても知れたものであると、父はその次の日曜日に思い切って探しに出た。広い町でないといっても、一丁目から二丁目にかけて軒別に探しまわるのは容易でない。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
軒別けんべつにさがして歩いても知れたものであると、父はその次の日曜日に思い切って探しに出た。広い町でないといっても、一丁目から二丁目にかけて軒別に探しまわるのは容易でない。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
町家を軒別けんべつにまわる町万歳は、乞食万歳などと悪口を云ったものでした。そういう訳ですから、万歳だけは山の手の方が上等でした。いや、その万歳について、こんな話を思い出しましたよ
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)