のぼ)” の例文
雪田はいつか又私達を狭い山脊やまのせに導いた、巨巌の上をのぼって間もなく岩を敷き詰めたささやかな平らに出る、そしてそこに見覚えのある一本の標木と
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
常の如くおのを携へて山奥に入り、柴立しばだちを踏分け渓水たにみずを越え、二里ばかりものぼりしが、寥廓りょうかくたる平地に出でたり。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
すなはち橋を渡りてわづかに行けば、日光くらく、山厚く畳み、嵐気らんきひややか壑深たにふかく陥りて、幾廻いくめぐりせる葛折つづらをりの、後には密樹みつじゆ声々せいせいの鳥呼び、前には幽草ゆうそう歩々ほほの花をひらき、いよいよのぼれば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
直に只見川を渉って対岸の岩壁をじるのである、この辺の只見川は水量が多くて、自分のようなコンパスの短いものは殆んど股まで達しる、山側をのぼり尽すと高原的の処となるが
平ヶ岳登攀記 (新字新仮名) / 高頭仁兵衛(著)