蹲居そんきょ)” の例文
藤棚の藤がさやになって朝風にゆらめくのを少し寝不足の眼で私がうっとりと眺めて入って居ると麻川氏は私のずっと後の薄暗い床脇とこわき蹲居そんきょ恰好かっこうすわり込んだ。そしてしばらく黙って居た。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
楓の木のまた蹲居そんきょして、桂子の様子を見守り出すと、猿猴の群れも啼き声をとどめ、木々の枝葉の間から、蛍火ほたるびのような眼の光を、無数に点々と闇にともし、彼らの王を見守り出した。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
枯れ萩におおわれた崖が、れ腐ちた縁のすぐの向こうに、壁かのように立っていたが、その崖を背にし縁の上に、先刻の三匹の親子狐が、鼻面を並べ蹲居そんきょして、この屋内を覗いていた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)